第三十二話 テスト勉強その十一
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「そうした批判出ると」
「そりゃ出るだろ」
「普通に批判来るわよ」
「そんなの当然だろ」
「そんな馬鹿なこと言ったら」
「いや、それがね」
それでもとだ、小山田君は言うのだった。その吉本隆明という思想家について。小山田君の顔はかなり真面目だった。
「それを言ったらあの人に失礼だとか言ってたんだ」
「麻原に?」
「失礼だって?」
「そうだったんだ」
こう僕達に話してくれた。
「そういう風にね」
「いや、そこだろ」
「そこじゃない」
「あいつのそうした所業こそがね」
「問題じゃない」
皆一斉に言った、僕もその中にいた。そして僕も含めて皆呆れた顔になった。それもこれ以上はないまでに。
「自分だけ美味しいもの食べて」
「それで愛人に囲まれて」
「人殺して」
「権力も狙ってって」
「そうしたところだろ」
「そうしたところが問題でしょ」
本当にそうだと思った、そうした点がとだ。
「ちょっとね」
「有り得ないから」
「そこが」
「問題なのに」
「どうしてそこを失礼って言うのか」
「何もわかってないんじゃ」
「宗教とかも」
そうとしか思えなかった、本当に吉本隆明はどんな人かと思った。
「そんな人が戦後最大の思想家って」
「有り得ないでしょ」
「そんなのが思想家だったら」
「それも戦後最大だったら」
まさにだった、それは。
「その辺りの人の方がね」
「頭いいんじゃ」
「ちゃんとした物事わかってて」
「思想家だろ」
「僕もそう思うけれどね」
小山田君も同じ意見だった。
「けれどね」
「そんな人がなんだ」
「戦後最大の思想家って言われてて」
「ずっと持て囃されてたんだ」
「そうだったの」
「まああれだね」
小山田君は結論に入った。
「変に難しい言葉や文章はね」
「迂闊に信じない方がいい」
「それよりもわかりやすい方がいい」
「そうなのね」
「そっちの方が」
「そう思うよ、だから僕はね」
小山田君が言うことはというと。
「太宰とか漱石みたいな」
「わかりやすい文章」
「それがいいのね」
「小難しい言葉じゃなくて」
「わかりやすい方がいいのね」
「難解とか実は何でもないと思うよ」
それこそというのだ。
「そんなことはね」
「読解力とか言われない?」
女の子の一人が小山田君に問うた。
「そういうのは」
「ああ、読解力ね」
「ほら、読んでもわからない人にね」
「読解力がないとか言うことあるよね」
「そういうのは」
「ああ、小難しい言葉の羅列なんてね」
それこそとだ、小山田君は眉を顰めさせて言った。
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