第6章 流されて異界
第117話 リリーフ
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「あんた、そんな球しか投げられない訳はないでしょう!」
本当にイチイチ五月蠅い女。確かに俺も少し煽るような行動を取る事も有りますが、それにしたってコイツのツッコミは多すぎるでしょうが。
ましてピッチング練習程度で本気になっても意味はない。何故ならば、俺に肩を作る必要はないから。
それに、そもそも、クトゥルフの邪神が支配するこの場所で全力投球は不可能。俺の本当の能力の何パーセントが発揮出来るのか分かりませんが……。
ただ――
「おいおい。いくらなんでも練習で手の内を全部見せる必要はないでしょうが」
ただ、本当の事を言っても意味はない。まして、全力投球が不可能だと言っても信用されないだけ。どうせ、あんたが手を抜きたいだけでしょう。……と言われるのがオチ。
そう短く考えを纏め、有希から返って来たボールを慣らしていた手を止め、少し振り返りながら肩を竦めて見せる俺。
もっとも、この受け答えで、先ほどのピッチング練習が見せかけだけの物だと言う事がこの場に居る全員にバレて仕舞ったのですが……。
まぁ、所詮これは小細工。自称ランディくんやリチャードくんには通用しないので、先ほどのピッチング練習を見て九組のナインが俺の事を嘗めて掛かってくれる訳はない。
……と考えて諦めるべきですか。
ふ〜ん、足りない頭で必死になって策を考えていたんだ。
少し感心したようなハルヒの独り言。但し、これは飽くまでも独り言。俺に聞かせる為に口にした台詞ではない。
そして、ここからが通常運転中のハルヒの対応。
「試合が始まったらちゃんと投げなさいよね。打たれたら承知しないんだから」
自分がボカスカと打たれた事は棚に上げ、俺に対しては無理難題を押し付けて来るハルヒ。
少し肩を竦め、処置なしだね、こりゃ。……と言う仕草をショートの守備位置に居る朝倉さんに見せ、
「へいへい。仰せのままに」
まったくやる気を感じさせない答えを口にしながら、有希の方向に向き直った。
その瞬間。
「プレイ!」
主審に因って為されるコール。普通ならばここで、キャッチャーから出されるサインを覗き込むトコロなのでしょうが……。
【初球は真ん中に大きなカーブ】
しかし、俺と有希の間にサインなど必要はなし。ふたりの間には、霊道と言う、目には見えない……、しかし、簡単に切り離す事の出来ない強い絆が結ばれて居り、その霊道を通じて秘密の会話を交わす事が可能。
こんな便利な物があるのに、わざわざサインを出すような真似は必要がないでしょう。
彼女から送られて来た【指向性の念話】に対して、小さく首肯く事で答えを返し――
かなりダイナミックなモーション。但し、身体の動き自体にスピード感はなく、
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