五十八話:ルドガー・ウィル・クルスニク
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顔のまま続ける。
「だって、ルドガーは―――エルのアイボーだもん」
突如として視界が黄金の光で覆われたことに驚いたもののすぐに光の中に居るはずのルドガーを槍で貫こうとするヴィクトルだったが次の瞬間には立ち上がる凄まじいエネルギーを宿す光の柱によって弾き飛ばされ後退を余儀なくされる。立ち上っていた光の柱が消えた場所から、壊れたはずの槍をしっかりと握った骸殻状態のルドガーが現れた。
だが、彼の姿は先程まで戦っていた姿とは大きく異なっていた。その異なっている点というのは背中から生えた光り輝く蝶の様な羽、オリジンの―――アイボーの力の証が存在したことである。
「バカな……それはオリジンの、いやエルの力! なぜ、貴様がエルの力を!?」
「なぜ? 簡単だ。俺が―――エルのアイボーだからだ!」
驚く周囲を置き去りにして一切の迷いなく宣言し、ルドガーは再び襲い掛かって来たヴィクトルを緩慢な動作で槍を一振るいするだけで弾き飛ばし、そのままの流れで無数の槍をヴィクトル目掛けて飛ばしていく。小型の槍だというのに一撃食らうだけで意識が持っていかれる様な先程より格段に増した威力に男は為すすべなくその身を撃ち抜かれていく。
男は朦朧とした意識の中、次は自身と同じ技である『マター・デストラクト』で槍を持って突進してくるだろうと思っていた。しかし予想は大きく外れることになった。両手に一振りずつ巨大な剣を持った彼が自身の懐に入って来たのだ。
「なんだこれは。“俺”は……こんな技、知らないぞ」
「当たり前だ。これは俺が編み出した技だからな!」
自身が全く知らない技に動揺し掠れた声を出す男に彼はこれが最後だとばかりに強く告げ、彼は剣を振る。一切の無駄なく抵抗を極限まで減らしたうえで縦に横に、斜めに容赦なく相手を縦横無尽に斬り裂いていくユリウスより受け継ぎし奥義『双針乱舞』を取り入れたルドガー最強の秘奥義。
「気づかないのなら俺が気づかせてやるよ。お前が全てを偽物だと思う事は自分自身が奥さんへの愛を、エルへの愛を、二人が自分を愛してくれたという事実を否定していることだろおっ!!」
怒りに近い感情を込めながら彼は真実を男に突き付け引導を渡すために巨大な剣を十字にクロスさせるように構える。ヴィクトルは告げられた事実に茫然とし、振り下ろされるルドガーの剣をただ見つめながら考える。どこで、間違えた? 何を間違えた? 全てはどこで狂った? その時、フッと彼の頭に必死に思い出さないようにしてきた少女との約束が思い出される。
――ホントのホントの約束だよ。エルとルドガーは、一緒にカナンの地にいきます――
それは遠い日の、何に代えても守ると誓い、自分が見捨てたアイボーとの思い出。
「こ
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