五十八話:ルドガー・ウィル・クルスニク
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ドガーは何も言わずに腕を広げて抱き留める構えをする。エルはとうとう堪え切れなくなりルドガーの胸の中に飛び込み泣きじゃくり始める。
「会いたかった……会いたかったよ、ルドガー!」
「……ああ、俺もだ」
「私ちゃんと約束守ってるよ! ウソついてないし、トマトだって今は大好物なんだから! スープの味も……忘れてないから…っ!」
「そうか……エルは偉いな」
エルは今までの想いを全て籠めてルドガーに告げる。そんな愛しい少女の背中をルドガーは優しくポンポンと叩いてやる。その姿は今も昔も変わらない二人の特別な関係性を表していた。しばらく、抱きしめていると少し落ち着いてきたのか顔を赤くしながらルドガーから離れるエル。そんな姿にルドガーはエルの成長を喜ぶと共に若干の寂しさを感じる。
「エル……俺は長くはここに居られない。大切な人が待ってるんだ」
「私より大切なの?」
「それは……その……」
「ふふふ……冗談だよ。パパにとってのママみたいな存在なのは分かってるし。パパが私を愛してくれてたのも知ってる」
黒歌とエルどちらが大切かと聞かれて困った表情をするルドガーにエルは悪戯っぽく笑いかけて父親の事を話し始める。彼女は分かったのだ。ヴィクトルは、自分の父親は自分を心の底から愛してくれていたことに。だからこそ、ルドガーは辛かった。今まさに自分が行おうとしていることは彼女の父親を二回殺す事なのだから。
「エル、俺は―――」
「大丈夫。パパには一回お仕置きしないとダメだから」
「お、お仕置き……」
戸惑いながら告げようとするルドガーに茶目っ気たっぷりに返すエル。あんまりな物言いに思わず、顔を引きつらせるルドガーだったが直ぐに真剣な顔つきに戻ったエルにつられて自分も顔を引き締める。
「パパは苦しんでるの……でも自分だけじゃ止まれないから誰かが止めてあげないといけないの。ママがいない今は、それは私とルドガーの役目」
「……俺に出来るのか? みんなの力を貸してもらっても負けた俺が」
「ルドガーは負けてないよ。だって、まだ私が力を貸してないんだもん」
そう言ってあの時のように小指を差し出して来るエル。あの時よりも大きくなったその指に思わず涙を流してしまいそうになりながらルドガーも小指を差し出してしっかりと絡める。指先を通して暖かな光がルドガーの体の中に流れ込んでくる。
「ルドガー……絶対にパパを止めてね。約束だよ」
「少し自信がない……エルのパパは強いからな」
「もう、弱気だなぁ。そんなに心配しなくたって大丈夫だよ」
一度言葉を区切り、満面の笑みを浮かべてみせるエル。不思議なことにエルの笑顔を見ただけでルドガーの中から迷いや不安は消え去って行く。エルはこれが最後の言葉になるだろうなと思いながらも最高の笑
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