五十八話:ルドガー・ウィル・クルスニク
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千切れていくのも無視して、狂ったように叫びながら、ただ我武者羅に力を振り絞り相手の槍を押し返す。一気に均衡を破りさった男の槍は驚愕する彼をよそに相手の槍を、意志を、跡形もなく―――砕き去る。
「俺の本当の世界はぁぁあああっ!!」
ルドガーの槍を、意志を、そして彼の仲間達の想いを破ったのは……ただ一人の女性への執念すら生ぬるい程の―――愛だった。
「ぐあぁぁぁっ!?」
自身の槍を砕き、そのままの勢いで襲い掛かって来た相手の槍にもろに貫かれた痛みに絶叫しながら吹き飛ばされるルドガー。その右肩から頭にかけての骸殻はかつてのヴィクトルのように壊れて酷い有様へと様変わりしていたがそれもすぐに骸殻が解けたことで見えなくなる。
もはや受け身を取ることすらかなわずに無様に地面に叩きつけられピクリとも動かなくなるルドガーに黒歌達が悲鳴を上げて駆け寄ろうとするが、オーフィスが立ち上がって無表情のまま道を塞いで来たので傍に行くことが出来ずに悲痛な面持ちで見つめる事しか出来ない。
「はあ…はあ…これで……“俺”の勝ちだ!」
完全にいう事を聞かなくなった右腕を押え、少し足を引きずりながらもルドガーの元に辿り着き、左腕で槍を振り上げ万感の思いを込めて自身の勝ちを告げるヴィクトル。そして、一撃で全てを終わらせられるように勢いよく槍を振り下ろそうとした瞬間―――金色の光がヴィクトルの視界を覆った。
周囲の意識が自分に釘づけになっている中、ルドガーは不思議な夢を見ていた。以前にミラと会った時のようにハッキリと夢だと分かる夢。一面真っ白で何もないある種の神秘さを感じさせる空間に彼はポツンと立っていた。自分がみんなの想いを背負っていながら負けてしまったことに後悔の念を抱いている所にそんな物を吹き飛ばしてしまうような声が聞こえてくる。
「ルドガー」
振り返らずともその声の主が分かった。少し、声が大人びているし、以前とは比べ物にならないほど体も大きくなっている。それでも、彼女を自分が間違えるはずがなかった。何故なら彼女は―――
「大きくなったな―――エル」
全てに代えて守り抜いた大切な少女なのだから。
「ルドガーは変わらないね。そのうち、身長を追い抜いちゃうかもね」
「それは……地味に傷つくな。いや、嬉しくはあるんだけどな。その……男としてのプライドが」
「もう、小さいこと気にしてると彼女に愛想つかされちゃうよ」
「うっ……き、気を付けます」
そんな、取り留めもない会話をした後に二人して笑い合う。ルドガーは優しげな顔でエルに微笑みかけエルはルドガーそっくりの笑顔で笑いかける。しばらく笑い合っていた二人だったが徐々にエルの目に涙が溜まっていき、溢れ出して来る。それに対してル
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