暁 〜小説投稿サイト〜
ルドガーinD×D (改)
五十八話:ルドガー・ウィル・クルスニク
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い掛かる。槍、しかも常人では持つことすら困難する重量と大きさを誇る槍をまるで片手剣のように高速でぶつけ合わす常軌を逸した最強のフル骸殻同士の戦いの最中、二人は言葉を交わしていく。

 相手を自らと同一の存在であると信じて疑わない男は同じ者は同時に存在することが出来ないという強迫観念に突き動かされるように何が何でも彼を殺そうとしてくる。自分達は違う存在だと理解することが出来た彼は全力でぶつかり合い男の幻想を砕こうとしている。二人は最も近く最も遠い存在であるがためにお互いを分かり合うことが出来ない。

「なぜ、わからない。“俺”はただ、みんな(・・・)と一緒に居たいだけなんだ。罪を償いたいだけなんだ。生きる意味を取り戻したいだけなんだ。それなのに……なぜ、同じお前が分からない!」

 地上に着地すると共に四筋の火球を飛ばしながらヴィクトルが泣きそうな声でルドガーに語り掛ける。実際にフルフェイスの下では涙を流しているのかもしれない。彼は冷静に火球を振り払うと同時にたった一度の踏み込みで男に肉薄し、速さと重さで高めた力をそのままに槍を握っていない左腕で男の顔面を殴り飛ばす。予想外にしていなかった素手での攻撃にダメージは大して受けていないものの男は動揺して足を止める。そこに彼が怒鳴りつける。

「分かる……分かるさ。痛い程その気持ちは分かる! でもな、それは逃げてるだけなんだ!」
「逃げて…いるだと? ふざけるなっ! 全てを取り戻したいと思って何が悪い!?」

 ルドガーの言葉に激高し、ただ敵を破壊するためだけに槍を乱雑に叩きつけてくるヴィクトル。彼は冷静に槍をさばきながらかつて自身も言われた言葉を男に憂いを込めて告げる。

「お前がしていることは辛い現実から目を背けて楽しい過去を見ているだけだ。
 自分の罪を償うなんて言って、罰に甘んじて償う心を忘れているだけで。
 生きる意味を探すことを諦めて以前の生きる意味にすがっているだけなんだ」

 その言葉はかつて彼が初めて本気で愛した人から言われた言葉。夢の中で本当の意味でヴィクトルと同じ存在になりかけた自分を止めてくれた言葉。それを男が止まってくれることを信じて今度は自分が投げかける。男はその言葉に驚き槍を振るう手を止めて何やら考え込む様に顔を俯かせる。もしかしたら止まってくれるかもしれないとルドガーは希望を抱くが―――

「確かにそうかもしれない……お前の言う通りかもしれないな。でも“俺”は止まらない」

 答えは変わらなかった。再び槍を握り直しルドガーはフルフェイスの下の目に悲しみを湛えながら再度ヴィクトルに問いかける。

「……どうしても、その選択をするのか?」

「選ぶんじゃない、もう選んだんだ!」

 歪んではいるが一切の迷いのない強い意志を込めた槍がル
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ