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小鳥と薔薇
小鳥と薔薇
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「足に頼ったらね」
 小鳥達は言った。
「けれど他にどうやって」
「移ればいいんだよ」
「移れば?」
「そうさ。まずはこれを受け取って」
「うん」
 小鳥達からそれぞれ羽毛を受け取った。
「それをね、飲むんだ」
「羽毛を飲むのかい?」
「鳥になれ、って念じながらね。鳥の言葉で」
「鳥の言葉で」
「人の言葉だったら無理だけれど鳥の言葉なら大丈夫だよ」
「そうしたら鳥になれるから。すぐにその森に行くことが出来るよ」
「そうか、有り難う」
 パトリックは一言礼を述べるとその羽毛を飲み込んだ。鳥の言葉で飛べ、と念じながら。
 すると不思議なことが起こった。彼の姿が見る見るうちに鳥のそれになったのだ。今彼は完全に鳥となった。
「それならすぐに行けるね」
「うん」
 鳥になったパトリックは頷いた。
「これならすぐにでも」
「ところで聞きたいのだけれど」
「何だい?」
「その小鳥だけれどね」
「うん」
「貴方の。何なのかな」
「友達さ」
 彼は答えた。
「友達」
「そう、かけがえのない友達なんだ」
 彼は強い声でこう言った。
「他の何よりも」
 この時わかった。彼は恋よりも友情が大切なのだと。そしてその為の犠牲なぞあってはならないのだと。彼はわかったのだ。
「そんなに大事なんだ」
「うん、だから今から行くよ」
 そう言って翼を動かした。そして舞い上がる。
「友達を救いに」
「頑張ってな」
 小鳥達は彼に声をかけた。
「それ程大事なものなら」
「何があっても守り抜くんだ」
「僕は誓ったんだ」
 彼は最後に言った。
「何があっても彼を守るって。今がその時だ」
 そしてレンスターの端へ向けて飛んで行く。他には何も見ようとはしなかった。ただ森だけを目指していたのであった。
 森にまで辿り着いたのはあっという間だった。気が付けばもう森の前にまで来ていた。彼にはわかった。そこに今ホリンがいるのだと。
「君を死なせはしない」
 パトリックは森の前まで来ると一言こう呟いた。
「犠牲になんか。絶対にさせない」
 そして森の中に入った。そのまま薔薇のある場所まで向かった。
 この時ホリンは薔薇の前にいた。そして薔薇の話を聞いていた。
「そうしたら君は赤い薔薇になれるんだね?」
「そうよ」
 薔薇は澄んではいるが冷たい響きの声で彼に答えた。
「私が赤い薔薇になるには血が必要なの」
 薔薇はホリンに対して言う。
「その棘に貴方の胸を刺せば。その血で赤くなれるわ」
「本当に赤い薔薇になれるんだね」
「私は嘘は言わないわ」
 薔薇はまた冷たい声で言った。

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