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小鳥と薔薇
小鳥と薔薇
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死ぬのに」
「それでもいいんだ」
 ホリンはまた言った。
「友達の為なら何でもするって決めたから」
「そうなの。それじゃあもう私達から言うことはないわ」
 小鳥達はホリンの顔と声に強い決意を見た。そして頷いた。
「行って来て。そして赤い薔薇を」
「うん、それじゃあ行って来るよ」
 ホリンは意を決した。飛び立ち言われた森に向かった。迷うことはなかった。そこに死が待っていようとも。
 パトリックはこの時畑で仕事をしながらホリンを待っていた。夜になると休み、何日も何日も。彼が何時帰って来るか、それだけを考えていた。
「今日も帰って来ないかな」
 彼はふと一息ついて呟く。空は青いがそこにあるのは雲だけである。他には何もない。
「早く帰って来て欲しいな」
 そして彼が帰って来る時を待つ。だがそれはなかった。それでも彼は待っていた。
 空を見上げ続けている。その頭の上を小鳥達が通った。
「あの森の薔薇だけれどさ」
「薔薇!?」
 パトリックはそれを聞いてハッとなった。そう、赤い薔薇のことである。
「あの薔薇を赤くするのには命を捨てなきゃいけないのに。あの小鳥はそれでも行ったよね」
(まさか)
 ホリンはそれを聞いて危惧を覚えた。
「そうだね。それでも友達の為って言ってね。どうなるんだろう」
(間違いない)
 その小鳥が誰なのか、もうすぐにわかった。
「あの森に向かったけれどね」
「多分何があっても赤い薔薇を手に入れるだろうね。本当に命を捨てて」
「命を!?」
「ん!?」
 小鳥達はパトリックが声をあげたのを聞いた。そして彼に顔を向けた。
「人間のお兄さん、僕達の言葉がわかるの?」
「ああ」
 彼は答えた。
「僕はここの人間だからね」
「隣の島から来た人じゃないんだ」
「違うよ。だから君達の言葉がわかるんだ」
 かって繁栄し、失われたケルトの術。ドルイド達が伝えた術。それが僅かに彼に残っていたのであろうか。
「そうだったの」
 小鳥達は彼の側に降りて来た。そしてまた言った。
「それで僕達の言葉がわかったんだ」
「うん。ところでさっきの話だけれど」
 パトリックは尋ねた。
「その小鳥は。何処に行ったんだい?」
「レンスターの端の森に」
「レンスターの。そこに向かったのか」
「けれど今から歩いて行っても間に合わないよ」
「えっ」
「馬でも。絶対に間に合わない」
「そしてあの小鳥は」
「そんな。じゃあどうすれば」
「だったら歩かなければいいのさ」
「そして馬も使わなくていいよ」
「けれどそれじゃあ駄目じゃないか」
 パトリックは困った顔をして言った。
「間に合わないよ」
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