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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
恋慕萌芽
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した。

 「もうちょっと驚いてよ!反応薄すぎるよっ!精霊だよっ!!お伽話によく出てくるあれだよっ!?」

 だが、再び進路を阻むように立ちはだかったリズに足を止められる。

 「それが、どうした」

 そのリズに冷眼とともに容赦のない冷淡な言葉を放った。

 「えっ?」
 「お前が精霊のハーフだったとして俺に何の利益がある?」
 「えっ、いや、その…………ち、力になれるよ?」
 「力、か……………………」

 デイドラはリズの言葉を反復するようにつぶやくと

 「…………上」

 とおもむろに言った。

 「上…………?」

 まるで脈絡のない言葉に小首を傾げるものの、リズは言葉の意味を汲み取って見上げた。

 「わわぁっ!!」

 見上げた天井に張り付いていたのは全長がデイドラほどもあるヤモリのモンスター『ダンジョン・リザード』。
 リズが見上げたと同時に襲い掛かっていたが、リズとの間に突然現れた二つの白刃に自ら刺されにいくかのように串刺しになった。
 へたれ込んで、膝上丈のフリルのスカートの中身を――レギンスを身につけているとは言え――無防備に曝すリズの前で、デイドラが頭上に突き出した二本の短刀にダンジョン・リザードは刺さっていた。

 「注意散漫、反応速度の鈍さ、対応手段のつたなさ。どれをとっても冒険者とは思えない。お前は本当に冒険者なのか?」

 腰を抜かしてへたれ込むリズを見下ろして、デイドラは問う。

 「冒険者だよ、一応」

 自分があられもない姿だとわかり、赤面しながら立ち上がると、取り繕うようにスカートについた埃を払って、答えた。

 「なら、やめるべきだ。お前は致命的に冒険者に向いていない」

 リズにデイドラはオブラートに包むことなく苦言を浴びせた。

 「へぇっ?」

 その言葉にリズは言葉を失い、茫然自失の態となった。
 そんなリズを余所に、デイドラは切り払うように水平に短刀を振ってダンジョンリザードの遺骸から抜くと、今度は光芒(こうぼう)を残すほどの速さで振り下ろし、血糊を払ってから左右の腰につけている鞘にそれぞれ収め、

 「お前には、死ねば悲しむ者がいるだろう」

 と、だけ言い残し、リズに背を向けて歩き出した。

 「えっ…………あっ、ちょっと、何でまた置いていくの〜」

 リズはその言葉に我に返ると、いつかのようにあたふたとデイドラの後を追った――デイドラの口にした、まるで自分には命を落としても悲しんでくれる者がいないと言っているかのような言葉を頭に響かせながら。
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