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ダンジョンに復讐を求めるの間違っているだろうか
恋慕萌芽
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っ!!見てて、きっと驚くからっ!」

 デイドラの冷たい言葉に沈みかけるも、自分を鼓舞するようにがしっと拳を作ると、情熱の炎を燈した瞳を閉じて、(りき)みはじめた。
 デイドラはリズが目を瞑ったのを確認すると、力むリズの横を、音を立てず、通り抜けようとした。
 が、唐突に眼前に現れた半透明な薄緑色の膜のようなものに阻まれ、思いがけず目を丸くしてたたらを踏んだ。

 「ねっ、驚いたでしょ?」

 目を開いてそれを見たリズは、デイドラが自分を置いて去ろうとしていたことなど露知らず、得意げに言った。
 そのリズの背中から、一見すると蝶のような半透明の丸みを帯びた一対の羽が伸びていた。
 羽は一定間隔で、放つ光を強めたり弱めたりしていて、その中を人魂のように青く淡い光の塊が幾つも律動している。
 デイドラはそんな幻想的とも言える光景に瞳視し、無意識に手を伸ばしていた。

 「ちょ、ちょっとぉ、くすぐったいよ〜」

 デイドラに羽を摘まれて、リズはくすぐったそうに身をよじらせる。

 「……すまない」

 それにはっとしてデイドラは我知らず伸ばしていた手を引っ込めた。

 「感覚があるのか?」
 「うんっ、あるよ。繋がっているようには見ないけれど、実は繋がっているんだよ」

 と、リズが言う通り、羽は直接背から伸びているわけではなく、目に見えない糸で釣り下げられているように、背から少し離れたところで浮いている。

 「精霊、なのか?」

 デイドラは驚きを隠せない声音で言った。
 精霊とは、神に最も近しいと言われる種族で、天変地異を引き起こせば、森に泉を作る。
 その存在はお伽話に頻出し、英雄を数多く勝利に導いている。
 そんな雲の上のような存在を、幼い頃に読み聞かされたお伽話で精霊の存在を知っていたデイドラは信じられないと思いながらも、その名を口にしていた。

 「ぶぶー、惜しいけどハズレー」

 と、そんなデイドラとは対極的に、寡黙だったデイドラが自ら疑問を口にするようになったことに見るからに気分をよくしたリズは、顔の前で両腕を交差させて×印を作ると、陽気な声で言って、言葉を続けた。

 「私は精霊とヒューマンのハーフなのっ!」

 リズは胸当ての上からでもわかるほどに標高の低い双丘を張って言うと、

 「これは私の主神だけが知ってる秘密なんだよっ」

 と、おどけた笑顔で付け加えた。

 「…………そうか」

 興味が醒めた――いや詳しく言えば、疑問が解消されたことで、彼を(ひそ)かに駆り立てていた探究心が霧散し、静まった心で見れば、その真実が自分にとって取るに足らないことことだとわかり、興味が醒めた――デイドラは、リズを数瞬見詰めてから答えると、横を通り抜けようと
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