第二百十話 夜の戦その五
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「ここは」
「そうですな、では」
「どうする、ここは」
「篝火が動いておりまする」
ただ燃えているだけではない、さらにだ。
動いていた、それは川の方に向けてさらにだ。
その動きを見てだ、片倉は成実に言った。
「ここは守りを固めましょう」
「渡って来るな」
「はい、ですから」
そう読んでいるが故にだった。
「ここは正面の守りを固めましょう」
「そうすべきじゃな」
「殿にもお伝えしましょう」
こう成実に言ってだった、そのうえで。
片倉は成実と共に守りを固めそれと共に川岸の物見を増やした、そうして守りを固めたうえで政宗に報を出した。
すると話を聞いた政宗は即座にだ、その隻眼を鋭くさせて言った。
「それはまずいわ」
「まずいとは」
「殿、一体何が」
「うむ、織田の数はそこまでおらぬ」
こう傍にいる者達に言うのだった。
「十五万もな」
「では援軍は」
「おりませぬか」
「援軍はおらぬ」
また言った政宗だった。
「若し援軍が来たなら織田信長ならな」
「あの者ならですか」
「どうして来るか、ですか」
「そうじゃ、それだけおれば一気に渡って来る」
その川をというのだ。
「奴は数を頼む、そして夜でもな」
「構わず来る」
「そうした者だからこそ」
「敵はそこまではおらぬ」
十五万はというのだ。
「とてもな」
「では、ここは」
「ここは、ですか」
「十万の兵を多く見せている」
「そうしているのですか」
「そうじゃ、しかもじゃ」
それに加えてとも言う政宗だった。
「他にも兵を動かしておるな」
「片倉様、成実様の仰る通り」
「そうだというのですか」
「そうじゃ、小十郎はそこはわかっておるな」
織田の軍勢が川を渡ろうとしていることはというのだ。
「流石じゃ。しかしその渡る者達が問題じゃ」
「と、いいますと」
「その者達は」
「織田家には優れた者が多い」
このことからも言う政宗だった。
「柴田勝家もな」
「織田家の武の二枚看板の一つ」
「あの瓶割り柴田がですか」
「他にもおる、あの者達が来ればな」
騎馬隊を率いて川を渡って来ればというのだ。
「危うい、だからじゃ」
「はい、ここは」
「すぐにですか」
「動くぞ」
この言葉と共にだ、政宗は立った。そして。
周りの者達にもだ、こう言ったのだった。
「全軍で行くぞ」
「はい、その織田の騎馬隊を防ぎに」
「その為にですな」
「わしは鉄砲騎馬隊を率いて向かう」
織田の騎馬隊を防ぎにだ。
「そしてじゃ、他の者達はじゃ」
「はい、小十郎様成実様のところに」
「向かいですな」
「二人の下で戦え」
政宗の両腕である彼等に従いというのだ。
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