7部分:第七章
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彼女のことも。
しかし今でも白百合が好きなこの気持ちは変わらない。それもわかる。その乱れる気持ちになり野菊を見れなくなった。その彼の目の前に現われたのは。
これもまた花だった。しかしそれは今この場に咲き誇っている野菊ではなかった。それは。
「百合・・・・・・」
そう、百合だったのだ。もうしおれて枯れようとしてしまっているが確かに百合だった。その百合が目の前に現われたのである。
その百合を見ているとまた少女のことを思い出した。それでまた悲しくいたたまれない気持ちになりそれで沈もうとしていたがそこで。あるものが目に入った。
「これは」
それは指輪だった。白百合の根のところを包み込むようにしてそこに入っていた。彼はそれに気付いたのだ。その指輪が何であるかも。
「そうか」
その指輪を見て呟く。
「この花は」
その白百合が何であるのかもうわかった。そして彼女の言葉の意味もだ。全てわかった。全てをわかった彼の心は静かに動いていった。
しおれてしまいもう咲いてはいない白百合に今側にあった井戸から水を汲み取りその水をやる。そうして今自分自身に対して誓うのだった。
「ずっと。これからもずっと」
彼は言った。
「好きでいるよ。ずっとね」
こう花に対しても告げた。そのうえで白百合の前を立ち去った。彼は静かに指輪が根本にある白百合の前から姿を消したのだった。
彼は大学を卒業した後家の事業を継ぎ家を栄えさせたという。彼は生涯白百合を愛し屋敷の庭はその白百合で咲き誇っていたという。そして郷土の新潟や学生時代を過ごした京都にも多くの白百合を植えたという。それが何故かは誰も知らなかった。しかし彼により多くの白百合が彼の屋敷を飾り新潟にも京都にも白百合が多いのは確かである。その由来は彼のこの若き日のことから来るものであることは多くの者は知りはしない。
花姫 完
2009・3・27
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