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戦国異伝
第二百十話 夜の戦その一

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                    第二百十話  夜の戦
 織田の軍勢は磨上原まで僅かの場所まで来た、そこに来た時にだった。
 甲賀者達を送っていた滝川がだ、信長に対して言って来た。
「殿、伊達の軍勢ですが」
「磨上原におりじゃな」
「はい、そしてです」
 そのうえでというのだ。
「黒川城をです」
「芦名氏の居城じゃったな」
「はい、あの城を焼き払い」
 そして、というのだ。
「空にしております」
「あの城を拠点に出来たがな」
 その磨上原での戦にだ。
「伊達もわかっておるの」
「そしてです」
 滝川はさらに報を述べた。
「本陣は高森山に配しております」
「磨上原の前にか」
「そこに片倉、伊達成実の陣を置き」
「伊達政宗はじゃな」
「はい、猪苗代城に後詰を置いたうえで」
「その後ろにおるか」
 片倉、成実の陣のだ。
「そこに本陣を置いておるか」
「そしてです」
「その本陣にじゃな」
「鉄砲騎馬隊がおります」
「己自身が鉄砲騎馬隊を率いるか」
 信長はその目を鋭くさせて言った。
「そして機を見て仕掛けるつもりか」
「そうかと」
「伊達政宗の戦は命を知らぬというがな」
「自身が鉄砲を撃ちますからな」
 無論馬に乗りだ。
「相当に命知らずですな」
「そうじゃな、そうしてくるか」
「殿、日橋川もです」
 高森山のその前に流れている川だ。
「既に伊達の軍勢がおります」
「川を渡らせぬか」
「その考えかと」
「船はない」
 ここでこう言った信長だった。
「残念じゃがな」
「はい、湖の岸から攻めることは出来ませぬ」
「その通りじゃ、だからここはな」
「日橋川を渡るしかありませぬな」
「それ以外にない」
 信長は滝川にはっきりと告げた。
「勝とうと思えばな」
「では無理に」
「いや」
 信長は滝川のその言葉は否定した。
「それはせぬ」
「ではどうされますか」
「先にも言ったな、兵はこちらの方が多い」
 織田の方がというのだ。
「こちらは十万、相手は二万じゃ」
「その兵を使われますか」
「そのつもりじゃ、敵の数は二万」
 このことをだ、信長は強く言うのだった。
「如何に守ろうともな」
「二万ではですか」
「限られておる」
 その守る力が、というのだ。
「そこをどうするかじゃ」
「そうなりますか」
「うむ、ではな」
 ここでまた言う信長だった。
「まずは日橋川のところまで行こう」
「そうされますか」
「そこからじゃ」
 信長は全く動じていなかった、その布陣を聞いても。
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