episode12
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
血を失い過ぎて朦朧とするタイガーに告げる。ずっと言いたかった。面と向かって「ありがとう」と告げるには年を食い過ぎていて、こんな言い方しか出来ない。
それでも、皆が涙を流し、名前を呼び続けた。タイガーのその息が絶えるまで......。
アンカーがそれを知るのは数日後。意識を取り戻した時だった。
「ニュ〜...。ジンベエ親ぶ...船長〜。アンカーの奴が......」
「分かっておる。...また、船の底か」
「どうしましょう...」
「放っておけ。混乱しておるんじゃ。今は、そっとしておいてやるのが一番じゃ」
タイガーが死に、アーロンが捕まり、ジンベエはタイヨウの海賊団の船長となった。
意識を取り戻した時にそのことを知ったアンカーは、あまりのことに頭がついて行けず、あの時のように船の底で頭の中の整理に勤しんでいた。
アンカーの頭の中には、ずっと『何故』が付きまとった。
『何故』タイガーは死んだ?
『何故』自分は生きている?
『何故』タイガーは“死”を選んだ?
『何故』自分が生かされた?
分からない。いくら考えても、何も答えは出てこない。
「アンカー!」
「うわっ!? びっくりした...」
「海賊が襲撃して来た。手を貸してくれ。あ、殺すなよ!」
奴隷解放の英雄フィッシャー・タイガーが死んだというニュースは瞬く間に知れ渡り、近海にいる海賊たちの襲撃はしだいに多くなっていった。
中には海賊同士で手を組み、力の差を数で埋めようとする者たちもいた。今回の襲撃もそれである。
「一際でけえ魚人が2人もいなくなったんだ! 俺らにも勝機はある! 野郎共、かかれーーーっ!!」
「ウオォーッ!!!」
海賊たちの主な狙いはジンベエただ1人。
それなりに名を上げ、手配書まで出回り、この間の海軍との争いで更に金額が上がった。そんな奴を倒したという事実と、願望と、名声が欲しいだけだ。
大抵の人間なら、少し力を入れて拳を突き出すだけで事は済む。ただ、それだけで済まないからこそ厄介なのだ。まず、数が多過ぎた。
殺さないように手加減して、大勢の相手をするのは意外に骨が折れる作業なのだ。誰かが、注意を引き付けてくれたら...という考えが浮かんだのとほぼ同時に、敵の海賊たちから「ぎゃあ!」だの「ぐほぁっ」と声が上がり始めた。
「調子に乗るなよ、人間共っ!」
「ア、アンカー!」
「僕が出来るだけ注意を引き付ける。...出来るだけだからね」
「充分じゃわい」
海賊たちから、どよめきの声が上がる。
魚人に協力する人間の姿に驚いているようだった。
その隙を突いて数人を海
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ