2部分:第二章
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第二章
「美果もお袋のこと好きだったからな」
「だからお昼から楽しみにしてたのよ」
昼のことも話した友香だった。
「お義母さんに会えるって」
「そうか。じゃあ御飯を食べたらすぐにな」
「美果を仏壇のある部屋の前に連れて行って」
そこにというのである。その部屋にだ。
「いいわね」
「それで御前は」
「着物着てそれで障子の向こうに出るから」
そうするというのである。
「もう着物は出しているから」
「よし。それじゃあ」
こう話してそのうえで打ち合わせを終えた。美果に気付かれないように小声で囁き合っての打ち合わせだった。それが終わってから暢彦は美果をその仏壇のある部屋に連れて行った。そうしてその畳の部屋の真ん中に父娘並んで座ってからその娘に言うのだった。
「さあ、もうすぐだからな」
「お婆ちゃんに会えるのね」
「そうだよ」
優しい声で告げた言葉だった。
「もうすぐ会えるからな」
「お婆ちゃん元気かな」
美果は期待する声で言うのだった。
「あっちの世界でも元気かな」
「元気に決まってるさ」
その優しい声でまた娘に告げたのである。
「だってずっと美果に会いたいって思ってるんだからね」
「お婆ちゃん私のことをそう思ってくれてるの」
「当たり前だよ」
それは当然だというのだった。
「美果はお婆ちゃんの孫だろう?」
「うん」
これは言うまでもないことだった。だからこそ美果とお婆ちゃんは一緒だったのである。お婆ちゃんが亡くなるその時までそうだったのだ。
「だったら会いたいって思うじゃないか」
「そうよね」
「会いたいって思うから元気でいられるんだよ」
「そうなの」
「そうだよ。だから楽しみに待っておくんだ」
こう話していくのだった。
「いいね。もうちょっとで来るからね」
「そうね。それじゃあ」
不意に後ろから畳を叩く派手な音が聞こえてきた。暢彦は美果を横に座らせてそのうえでその音を聞いてその音が何か思うのだった。
(ゴキブリだな)
それではないかと察したのである。実は最近家の中にゴキブリが出て友香にしろ彼にしろその対策に頭を悩ませているのである。
(本当にゴキブリホイホイを買わないといけないな)
そんなことを思いながらだった。美果の隣に座って待っていた。すると障子の向こうに黒い影が姿を現わしてきたのであった。
「あっ、お父さん」
「あれっ、早いな」
ここでふと驚いた声をあげた暢彦だった。美果の言葉とは正反対になっていた。
「もう来たのか」
「早いって?」
「あっ、いや」
つい出してしまった言葉だったので咄嗟に自分で打ち消すことになってしまった。
「何でもないよ」
「そう。何でもないの」
「それよりもね。美果」
「うん」
「お婆ちゃん
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