彼の為の優しい鎖
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仕事が終わり、悠々と配下の主要人物達を引き連れて来店した華琳は、夜天の間の中で三人の少女とお茶を飲んでいた秋斗に対して、悪戯っぽい笑みを一つ向けた。
猪々子は居ない。誘われていたのだが、さすがに官渡を敵として戦った自分が混ざるわけにはいかないと彼女自身が断っていた。
扉の奥にずらりと並ぶ面々を見やりながら、彼は緩く笑みを浮かべる。
「今日の仕事はちゃんと遣り切ったかしら?」
休むことが仕事だと命じたからには、彼女もその報告を求めている。
なんともいえない表情になった秋斗は、短く息を付いて首を振った。
「充実したお仕事をさせて頂きましたとも……雇い主様」
「それはご苦労。三人の休息にもなったみたいで良かったわ。今後とも、仕事仕事と忙しなく動いて言い訳に使うことは許さない、分かった?」
「重々承知しております、雇い主様」
よろしい、と一言。
勝ちの笑みを向けている華琳に対して公式の話し方でやり返してみても、それがどうしたと言わんばかり。
霞が隣で笑いを堪えていた。春蘭と秋蘭は彼の喋り方に寒気がするというように身を震わせてドン引きの視線を向ける。彼の友は味方になってくれないらしい。
「おやおやー、お兄さんのお仕事はまだ終わっていないのでこの宴会でもずっとその喋り方で居てもらうというのはどうでしょう?」
「風……さすがにアレは違和感が凄いですよ? 私達の前で礼儀正しい秋斗殿など見るに堪えません」
「どっちにしても場の空気が汚れるんだから口を閉じて喋らないで。腹黒変態幼女趣味男」
風と稟がまじめな顔をしていながらもいつもの如く。桂花も倣って畳み掛ける。にやりと笑う三人の顔は、彼を苛めることしか考えていない。
「兄ちゃん普通に話してよ。なんか背中がムズムズする」
「え……わ、私はそのままの兄様でもいいと思います」
素直に自分の思ったことを言う季衣に対して、流琉は意見を別にした。季衣としては普段の秋斗でないと嫌なわけで、流琉は憧憬のフィルター越しだからかその胡散臭さが見えていない。
「兄やんあかんで、ウチもさぶいぼ立ってきおった……」
「徐晃さんの敬語ってなぁんか変なのー。沙和も嫌かなー」
「……」
ぶるりと震えた真桜。沙和は苦笑交じりにふるふると首を振る。凪は……ジトリ、ときつい視線を投げていた。
そんな仲間達の様子に、クスクスと彼の隣で笑う少女達が三人。確かに違和感あるわよね、と詠が零した。
がっくりと肩を落とした彼は盛大にため息を吐くしかなかった。
「敵しかいねぇ……まあ早いとこ座って始め――――」
「秋兄様ぁ――――っ!」
「ぐっほぁ!?」
顔を上げて華琳に促そうとして直ぐに、彼の腹に衝撃が走る。どうにか隣の雛里の方には倒れずに済んだ
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