暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
彼の為の優しい鎖
[9/21]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
は意味が無いもの。
 私の可愛い春蘭には、張り合いのある好敵手が必要なのだ。
 霞は確かに好敵手足り得る。軍功で競い合いも出来るし、鍛錬で戦うことも出来るだろう。
 絶対に起こり得ないことだけど、別にどうしても勝ちたいと願うならコロシアイをしてくれても私は構わない……それをこの子達の望んでしまうのなら、私の求心力はその程度ということ。
 命を乗せない戦いなど、霞は求めていない。たかだか試合程度で満足出来る、仲良しこよしの慣れ合いの一騎打ちの勝利を願う程度の渇望では、神速の部隊をあれほど見事な騎馬隊に育て上げるのは不可能。

――でも、やはり足りない。理由としては、春蘭と霞では……春蘭の中で優劣が完全確定している為に。

 春蘭は本気で戦って一度勝った相手には粗々負けない。呂布程の化け物でも無い限り確実に負けは無い。長くこの子を見てきたからそう思える。
 努力に裏打ちされる実力と、背負っているモノの大きさがその度に膨らんで行く。だから、負けない。

 本物の将軍というモノは、他者の命をその両肩に背負うモノだ。
 彼女は単純に私の期待に応えたいとしか考えてないだろうけど、見る人が見ればそれが分かる。
 今の秋斗や絶望に堕ちる前の明の剣を彼女は軽いと言ったらしい。生粋の武人で純粋な戦人である春蘭には、相手の剣の重さがどれほどのモノか分かるのだろう。
 霞が勝てない理由は、たった一つ。

――春蘭が、私の武の右腕であることが理由。それはつまり、私の想いを代替していることに他ならない。
 心が解け合う程に長く過ごしてきた彼女だからこそ、こと戦に於いて私のしたいことを直感で判断して行えるし、私の想いの一端をその剣に乗せられる。

 春蘭や霞程の武将同士が戦場で一騎打ちをする時は、単純な武力の勝負では無くなる。人の強さは心で変わり、背負うモノの大きさで何倍にも膨れ上がる。

――鼓舞すれば死力を振り絞って誰かの為に戦うようになる兵士達を見れば誰であっても分かることなのだが……それに気付くモノは少ない。

 想いの強さが上乗せされれば、呂布のような正真正銘の人外武力を除いて、春蘭は悪くても相打ちにしかならない。
 下地が出来つついい所まで戦えるのは……劉備の想いの代弁者足る関羽か、それとも呉を背負って立つ孫策……そして、あの大嘘つきの黒麒麟だけ。

 霞には酷な話だが、実力が拮抗していてもそれがあるから勝てないでしょう。個人単一の望み程度で勝てるなら、私は春蘭を右腕にしていないのだから。

――絶対にしないことだけれど、あの呂布に対してさえ、今の春蘭ならある程度の時間稼ぎが出来るでしょう……私は胸を張ってそう言える。

 哀しいことではある。武で天に昇り得るモノは飛将軍だけ。追いつけるモノがいないから呂布は飛将軍だ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ