彼の為の優しい鎖
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いた華琳も、口元が緩んでいるのが分かる。
「ほな、皆も杯掲げてーな」
「か、華琳様から任されたのは私だぞ?」
「あー、あかんあかん。いつまでも始まらんのは勘弁やで。秋斗が真面目くさってええかっこしぃなこと言いよったからって合わせやんでええねん。ウチら四人なんて、こんなんやん?」
「クク、だな」
「……まあ、違いない。それに姉者、望んでいたことだろう? 此処は夜天の間で――――」
「う、うるさいっ! ええい! 皆の者! 杯を持てっ!」
「くくっ、もう持っとるちゅーねん♪」
「冷やかすなバカ霞!」
言いながら蹴りを一つ。避ける霞は平常運転の神速。さすがに春蘭も空気を読んで追い掛けたりはしなかった。
仲がいい四人の様子に微笑ましくなった華琳の笑みが、また穏やかになった。
「では、華琳様より任を賜った私が僭越ながら宴の開きを受け持たせて貰う! 我が主に感謝を、散った命に感謝を、戦った友に感謝を、戦った敵に感謝を、新たな同志に感謝を! 全ての者に感謝を込めて、生きている今この時を騒いで、はしゃいで、笑って、楽しもうではないか! では……乾杯っ!」
掲げられる杯は幾多。春蘭達四人は、いつもしているように杯を合わせた。何を言わずともいい、四人はそれぞれ見えない想いで繋がっている。
宴の始まりは大剣の言の葉から。彼の言ったことに被せて、春蘭にしては珍しく綺麗に纏まっていた。
楽しい宴が始まる。昔よりも楽しいと思えるこの場を、華琳は素直に嬉しく思った。
――偶にはこれくらい緩すぎるのも……そうね、悪くない。
†
酒を飲めば気分が良くなってくるのは大抵のことで、私も少しだけ酔いに頭を浮かせながら秋斗達との話に興じていた。
季衣と流琉に真名を許して貰った秋斗は、彼女達がこの軍に仕えることになった経緯やどれだけ春蘭と秋蘭に憧れているか、春蘭と秋蘭、そして私の三人で過ごしていた懐かしい昔話や笑い話、黒麒麟が黄巾の時にどうやって過ごしていたか、どんな言葉を発したか……そんな他愛ない話に聞き入っていた。
春蘭はその時の秋斗のことを今よりも認めていたらしい。初めから絶対に私に仕えるべきだったと言う辺り、この子なりに思うところがあったのでしょう。
今も尚、正式に仕えようとしない秋斗にも腹が立っているように見える……私も秋斗も、それについては周りには何も言わないことにしているから少しだけ申し訳ない。
――それだけじゃないわね。秋斗と春蘭のそういうやり取りが好きだから、というのもある。あとは秋斗と春蘭が同等に見えることも大切、そんなところ。
認めているどうこうではなく、二人の子供っぽい喧嘩は見ていて飽きない。それに私が言って聞かせるのは簡単だけれど、それをして
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