彼の為の優しい鎖
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レギュラーに対して非常に弱い。
思い付く側が多い彼は、思いつきを向けられる事にもなれていない。
じーっと皆が見つめていた。もはや逃げられるわけがない。期待している少女が幾人も居て、面白がっている少女達が数人居て、不機嫌そうに唇を尖らせる少女が何人か居る。
思えば女ばかりに黒一点である。なんだか居た堪れないような気になりながらも、秋斗は気を引き締めることにした。立ち上がって、彼はいつものようにため息を一つ。
「えーっと……じゃあ、黒麒麟みたいに願いを掛けるのもアレだし、長く語るのもなんだから少しだけ。
俺達は生き残った。この時を楽しめるのは命があってこそだ。こうして平穏に過ごせるのは生きているからだ。
でも失ったモノも多い。救えなかった、助けられなかった、失わせてしまった、殺してしまった、殺させてしまった……そんな命が山のようにある。
生き残ったのなら、死んでった奴等の分まで幸せになればいいと思う。そいつらは、もう戻ってこないし、幸せになれない……だから、俺達が笑わないとダメなんだ。
憎まれても気にせず笑え。蔑まれても胸を張って笑え。懺悔していようと、同情していようと、後悔していようと面に出さず、先に生きるモノを想い、先に生きるモノに願い繋げ。それが俺達に出来る最大限の礼の返し方、なんじゃねぇかな? どうかな春蘭?」
「う? あっ、な、何故私に聞く!?」
「いや、お前が五大将軍の頭に就任するわけだし、一応さ」
話きったところでどうしていいか分からず、彼は春蘭に投げた。慌てようが面白くて、霞や季衣がクスクスと笑いを漏らしていた。
「ふふ、春蘭。あなたが一番功を上げた。それに官渡で私の代わりを務めたのは秋斗とあなたと言っても過言ではないし、宴の始まりも“任せるわ”」
そう言われて立ち上がるも、カチコチと春蘭の身体が固まった。彼女とて慣れていないわけで、どうしようもない。
秋蘭なら形式を貴ぶような挨拶で綺麗に仕立て上げられただろう。しかし彼女では、余りに拙い。
助け舟を出そうか迷っている秋蘭と、話を振った側として申し訳ない秋斗。
ただし、此処で動かずに居るなどと、それほど“彼女”が“遅い”わけも無い。
「にゃははっ! 固まっとる春蘭もかぁええなぁ! 春蘭と秋斗だけやなんてずっこいやん? ウチも混ぜてぇな! 秋蘭も、な!」
「し、霞っ? 私は――――」
「え、え、の! ほらぁ、ウチかてはよ酒飲みたてしゃあないんや! ぱぱーっと始めてたらふく飲むで! 秋斗も立ちぃ!」
「お、おう」
グイと手を引っ張って二人を立たせた霞。秋斗は華琳に目線と頷きだけで謝った。
グダグダであるが、悪くない緩い空気だった。昔の曹操軍とは思えないほど、緩くて暖かい、そんな空気。
短く呆れの吐息を吐
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