彼の為の優しい鎖
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多く話せてうらやま……馴れ馴れしく話すなど不敬だというのになんだその言い草はっ」
「ああ、訂正する。めんどくさいバカが増えたからプラスマイナスゼロだった」
「誰がバカだっ!」
「お前に決まってるだろ!?」
「ほう、徐晃……お前は華琳様と話すのがめんどうだと、そういうのか?」
またいつもの喧嘩に発展しかけた所で、隣の秋蘭から冷たい声が掛かった。
ぎりぎりと音がしそうな程にゆっくりと振り向けば……微笑を浮かべる麗人の姿。
計算どおり、と華琳は笑っていた。内心舌打ちをしつつ、頬を引き攣らせて秋斗は笑った。
「いや、なに……ほら、な? そんなわけないじゃないか。言葉のあやっていうか冗談っていうか」
「言い訳は見苦しいぞ」
「うわー、兄ちゃんさいてー」
「に、兄様、ダメですよ」
彼の味方はやはり居ない。自分で撒いた種は、自分で刈り取らなければ。
しかし幼い季衣と流琉に言われてはどうしようもない。
「ちょ、ちょっと手洗いに……」
「逃がすと思うか?」
「逃がすか!」
「流琉、捕まえてっ」
「うんっ」
「て、典韋っ、やめろ! 分かった、逃げない! 逃げないから! すまんかった!」
「秋斗、あとでおしおきね。秋蘭も春蘭も許してあげなさい。季衣も流琉もありがとう。コレが無礼なのはいつものことよ。気にするだけ無駄だわ」
また幼女に抱きつかれるカタチとなっているのだから、遠くで見ていた少女達が呆れの吐息を零さぬはずはなく、華琳はその様子にまた笑みを深めた。
素直に謝ったのだから許してやろう。それでいい。こんな時間を繰り返してもいいが、そろそろ……そうしてゆるりと立ち上がった。
ぱんっ、と手を叩いて意識を引き付ける。視線が全て彼女に向けば、大きく息を吸い込んだ華琳が凛と声を紡いだ。
「皆、今日は良く集まってくれた! 一つの戦が終わっても我らがすべき事は終わらない。それでも、この一時は仕事のことなど気にせず楽しんで欲しい。
あの戦から十日過ぎた。本当に、随分と待たせたわね。今宵は先の大戦で奪い取りし勝利に……酔いしれましょう。杯をっ」
びしりと張りのある声を合図に、それぞれがそれぞれの杯を手に持った。
ただ、それで終わる彼女のはずが無い。面白いことが好きで、悪戯が好きで、苛めるのが大好きなのだから。
「では徐公明……黒き大徳よ。遠き幽州の大地で夜天の願いを紡いだ黒麒麟のように……私の街でも、皆と共に何かを紡いで貰おうか」
「……はい?」
後は乾杯するだけだとばかり思っていた彼から素っ頓狂な声が漏れた。
にやりと笑う華琳は本気だった。此処で冗談を言うような人物ではない。
――……やっぱ苦手だ。
予測して予想して積み上げるしか出来ない彼は、こういったイ
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