暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
彼の為の優しい鎖
[4/21]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のにと、ゆるりと躱されて苛立ちが募った。こういう時にやたらと頭が回る彼に、呆れも出てきた。
 これ以上何か言ってもつまらない。せっかくの時間だ。早々に始めようと華琳はため息とともに割り切った。

「……とりあえずはその形式に従ってあげる。ただし正面に来るというのだから、しっかりと私を持て成しなさい」
「ご随意に、覇王殿」
「皆は好きな所に座りなさい。それくらいは、いいわよね?」
「いいんじゃねぇか? 別に華琳の隣は俺以外の誰であってもいいわけで、取り合いするくらいが丁度いい。それはそちらさんが決めることさ」
「ふむ……戦勝祝いと言っても堅苦しすぎるのも考え物か」
「仲間内でやる只の飲み会ってんなら全部気にしなくていいんだが、お前さんが先に言い出したからな」
「相変わらず……ずるいわね、あなたは」

 華琳が苦笑を零したことで緩い空気が広がった。それを機に、彼女達は好きな席に散って行く。

「せっかく皆さんで集まるのに私達で固まるのもなんですから……席を移動しますね。朔夜ちゃんも霞さん達の席でお話しようか」
「……はい」

 如何に四人の休日だと言っても、彼が予定していた皆のための酒宴。それなら、と月が静かに立ち上がる。
 朔夜に対してのこれは罰。場を乱しかけたからには、信賞必罰を甘んじて受けるしかない。

「ボクは風達のとこ行くわ。あんた達二人の話を聞くのも面白そうだけどね。雛里はどうする?」
「そ、そうですね……まだ風ちゃんとは余り話していないので、私も行きます」

 離れたくない、とは思う。けれども友好を深めることも大事であろう。この軍で過ごしていく以上は、もっと皆と仲良くなりたいと雛里は感じていた。
 朱里を中心にして回っていた昔であれば有り得ないこと。彼を中心にして回る世界に閉じこもろうとするでもなく、彼女は自分からそれを望んだ。

「ん、そうか。楽しんでおいで」
「あわわ……」
「あんたねぇ……まあいいわ」

 優しく頭をなでられた雛里はいつものように真っ赤になりつつ立ち上がる。呆れと少しばかりの羨望を瞳に浮かべながらも、詠も立ち上がった。
 とてとてと離れていく彼女達を見送って、秋斗は対面に座った華琳に向き直る。

「あの子達が首から下げてるのはあなたが買ったの? 見たところ値の張る銀細工のようだけれど」
「……黒麒麟から借りといた」
「呆れた……昔の自分の給金でも“徐公明”のモノでしょうに。好きに使えばいいじゃない」
「そうは言うがな、汗水垂らして働いた覚えの無い金に手をつけるのは嫌なんだ。今回の事は先行投資の契約で早急な対応が必要だったから使わせて貰うが……二度とせんよ」

 自己への嫌悪感丸出しで言い放つ彼に、はぁ……と、華琳は大きくため息を零した。

――自分と
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ