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乱世の確率事象改変
彼の為の優しい鎖
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ビビりつつ、彼は華琳に向き直る。
 数瞬だけ、秋斗は呆気に取られた。微笑ましいモノを見るように、華琳が自分達のやり取りを眺めていたのだ。
 邪魔するつもりは無い。好きにしたらいい。この日は彼らの為の休日で、今この時もそうなのだから、と。見ているだけで楽しい、彼女はきっと、そう思っている。

「もういいのかしら?」
「ん、構わん。すまんな待たせて。腹減っただろ」
「これだけの料理を前にしてはさすがにね。それとね秋斗、あなたは私の隣に来なさい」
「りょーか……はいぃ?」

 いきなりの命令に口をあんぐりと開ける者が多数。軍師達でさえ呑み込めず、思考に空白が齎された。
 やはりというかなんというか、直ぐに立ち直ったのは二人である。

「い、いけません華琳様っ! 徐晃が隣など――――」
「お好みのお料理でしたら私が直ぐに取り分けますからそれだけは――――」

 桂花と春蘭の慌てようは凄まじい。二人共が彼に殺気を込めて睨みを利かせ、いつもいがみ合っているというのに仲が良く見える程。
 くつくつと喉を鳴らして、華琳は笑った。

「見た事の無い料理があるじゃない? 店長は下で料理に忙しいようだから、秋斗に解説させないとダメでしょう? それにね……一応この大バカ者は客分なの。形式上は私の隣にいさせるべきで、それを崩すのはよろしくない」

 ぐ……と二人は言葉に詰まった。そう言われては何も言えない。理まで説かれると、間違いなく華琳が正しい。
 きっちりと引かれた線引きがあった。曖昧に崩れ過ぎないようにと。上と下、常識と形式、如何に気心が知れていようと大切な時もある。
 しかしながら……そんなことは気にしないのが彼でもある。

「やだね」

 べーっと舌を出して、彼は華琳に反発の意を示した。
 苛立ちは突き刺すように、華琳のアイスブルーがギラリと輝く。

「へぇ……私の言うことを聞かないと?」
「クク、その言い分だと、客分だが雇われ傭兵な俺は最底辺に等しくもあるんじゃねぇかな。そんな俺がお前さんの隣の席次ってのは違うって反論させて貰おうか。何より、だ……この宴会は俺が店長に教えた形式なんだ。形式に従うなら客分の前に座るのがいいと思うがどうかな、華琳」

 トントンと机を指で叩き、不適な笑みを浮かべる彼は自分の前を示す。
 これが彼の故郷の宴会を模しているというのならば、この部屋で華琳と秋斗が座る席は決まっている。
 あくまで彼は夜天の間の中心、それも入り口側を動かない。宴会を開くと言った以上は例え華琳の言で場所が変わろうとも、幹事としてお持て成しをする側の位置で、この宴会を動かすつもりなのだ。

――せっかく桂花や雛里の可愛い姿が見れる所だったのに……面白くない。

 からかい苛めて楽しむつもりであった
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