彼の為の優しい鎖
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えてあげましょうか」
にやりと笑う顔に、寒気が一つ。こういう表情をする時は決まって悪戯を考えている時だ。それも、秋斗が困るような。
ひくついた頬を無理やり上げて、秋斗が笑う。
「へぇ、聞かせてくれ」
哀しいかな、彼には読み取れなかった。
「店長に話して今日はこの夜天の間で泊まることにしたのよ。もちろん、あなたも皆と一緒に同じ部屋で寝て貰うわ。存分に困った顔を見せて頂戴ね。ちなみに皆には了承を得てるし、その為に風呂も入らせて来た」
絶句。
雛里達とだけでも拒絶していたというのに、黒一点の彼に女の子達と同じ部屋で寝ろと華琳は言っているのだ。
男として精神衛生上よろしくない。秋斗個人としては最悪に近しい。
「ま、待て。俺は拒否するっ! なんで男の俺がお前さんらと一緒に寝なきゃならんのだ!」
「ふふ、いいわね、その顔。拒否権は無しよ」
「知らん! 女だらけの場所でなんか寝てられるか! 絶対に嫌だね! 俺は帰らせてもらう!」
フラグが立ちそうな言葉と共に立ち上がろうとしても……流琉に腕を抑えられて立てなかった。
大きな声を出せば皆に聞こえるのは当然で、先に話を聞いていたらしい皆が一斉に秋斗を見やった。
「兄様……せ、せっかくなんですから……」
うるうると涙目で見つめる瞳は子犬の如く。
これだけ人数がいれば間違いなど起きるはずが無い、皆と一緒なら恥ずかしくもない……そう考えていた流琉は、秋斗が本気で嫌がっていることにショックを受けていた。
やっと仲良くなったと思ったのに、と。
その横、しなり……と彼の肩にもたれ掛かる美女が、一人。
蒼髪が肩を擽り、ほんのりと朱に染まった頬と潤った瞳が妖艶に過ぎた。
「なぁ、徐晃。せっかくだろう? せっかく楽しい夜なんだ。皆で朝を迎えるのも悪くない。そんな意固地にならず一緒に寝よう。たまには……なぁ?」
耳元で囁かれる声にドキリと胸が脈打つ。普段の秋蘭であれば絶対にしないような、まるで閨に誘うような甘い声にさすがの彼も固まった。
――こいつ……酔って気が大きくなってやがるな……じゃあそろそろ春蘭もやべぇ。
華琳の少し横を見れば、春蘭が俯いていた。隣で霞が慰めに彼女の喉を撫で繰り回している。毎度毎度、酒盛りの度に起こる事なのだ。分からぬはずも無い。
嗚呼、と声を漏らした時にはもう遅かった。酔わせるように仕向けたのは秋斗だ。自業自得とはまさにこのこと。
肩を震わせ、目に涙を溜め、下唇を噛んで春蘭は秋斗を睨みつけた。
「わ、わたしたちだってなぁっ! きしゃまとはしゃぐのを楽しみにしていたんだっ! 出来るだけ長いこと楽しみたかったんだっ! なのにそんなに……そんなに嫌がることないじゃないかぁ! ばか! ばか
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