彼の為の優しい鎖
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凪の決意の後に、季衣と流琉が悩ましげに声を出した。
「親衛隊でいたい? それとも将になりたい?」
彼女達はきっと悩んでいる。このまま親衛隊として過ごすのが正解なのか、それとも一角の将として部隊を持つのか。
幼いから、というのは言い訳にしかならない。戦場に立つ以上は、年齢よりも実力がモノを言う。
尋ねた言に対して、二人はきゅっと唇を引き結んだ。
「ボクは……春蘭様みたいになりたい。それでいつか追い越したい。目標なんだっ」
「私は……秋蘭様のようになりたいです。少しだけ後ろで支えながら、それでも誰にも負けないように」
姉のように慕っている目標が居る。親衛隊のままでは、彼女達は其処に到達できないだろう。
小さな両肩に今回失わせた命を乗せて、彼女達は華琳と親衛隊の庇護から飛び立つ決意を持った。
優しく微笑んだ華琳は、二人の頭を優しく撫でた。
「いい子。これから辛い選択がたくさん待ってるでしょうけど、あなた達なら乗り越えられる。春蘭と秋蘭に負けない良い将になりなさい」
心地よさそうに、そして嬉しそうに目を細めた少女二人は、少しだけ寂しさを心に宿す。
「季衣と流琉がバカ共に任せるって決めたってのは……まあ華琳なら大丈夫か」
のんびりとした声は横から。綻んだ頬は嬉しさに染まっている。親衛隊の男達を想って、彼は大盃を傾けて酒を飲みほした。
見れば春蘭と秋蘭が霞に絡まれていた。何時の間にそんな状態になったのか分からないが、秋斗が何かけしかけたのだろう。
華琳が季衣と流琉に意識を向けていた隙に、彼は窮地を脱していたのだ。
「なによ?」
「お前さんも親衛隊を認めたってこったろ? 死んだ奴等も報われるんじゃねぇかなって」
「……どうせ生きてる親衛隊が想いを受け継いでるんでしょう? 徐晃隊とほぼ同じ部隊に……あなたがしたんだから」
「まあな。でも攻撃と守りじゃ戦い方も違ってくるし、何よりあいつらはあいつらだよ、華琳」
緩く話す言葉は曖昧で、季衣達には何を伝えたいのか少しばかり分かり辛い。凪でさえ首を傾げていた。
華琳は、むっと不機嫌になった。
「……秋斗のくせに生意気」
「へいへい。生意気で悪かったです覇王様」
「あなた、酔ってるわね?」
「ちょいと……まだまだ行けるが。お前さんはもう終わりなんで?」
飄々と何処までも緩く受け流す。挑発に等しいその言葉に、華琳はまた苛立ちが募った。
そこでふと、思い至る。
――そろそろ命じてやろうか。あなたが困ることを。
城でするはずだった宴会をわざわざ娘娘で執り行った理由を秋斗に話せばきっと困るに違いない……そう考えて、楽しさが胸に湧き立ち苛立ちを打ち消した。
「秋斗、どうして娘娘で宴をしたか教
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