彼の為の優しい鎖
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いつの間にそこに居たのか神速が笑っていた。
「あら? 春蘭と戦ってくれてもいいのよ?」
「春蘭と本気で戦うつもりはもうあらへん。コロシアイせな本気とちゃうさかいな。命の保証がされた茶番なんざで満足でけへんて。ウチの渇望は安ぅならへんもん」
「コロシアイをしてもいい、と言ったら?」
「ははっ、ウチ個人の想い程度で勝てるってぇ考えるんやったら、それは春蘭と……華琳の想いへの侮辱やろ?
鍛え上げた実力でどうこうなるんはお綺麗な試合だけで、戦場での力量ちゅうんは全くの別もんやて。
月の為に戦っても、ウチの欲の為に戦っても、華雄の雪辱の為に戦っても……そんな想いぜぇんぶ乗せても勝たれへんかったんや。今やと足りひんもんが多すぎるやん?
それに、其処までした勝ちたいってぇ望んだ時点でウチはあんたの欲しいと願った神速から外れてまう。ウチかてそんなアホにはなりたないわ。一緒に戦っとるバカ共の想いも汲み取れへんドアホウにだけは、な」
挑戦的な視線は、見くびるなよ、と言わんばかり。霞は華琳の言いたい事を看破していた。
やはりいい将だ、と華琳は思う。自分が欲して、春蘭の片目を捧げてまで手に入れた将は、間違いなく正解だった、と。
「それがあなたのしたい事?」
「せや。ウチは神速の張遼やもん。
季衣も流琉も凪もよう聞き。ウチの名はバカ共と一緒やないと響かん。あいつらと一緒に最強目指して好きなようにひた走って最強になるんや。秋斗のバカには負けへんでぇ?」
にかっと笑った表情は子供のようでありながら、その声には芯が通っていた。
背中が大きく見えるのは、きっとその背に乗っている命の数々から。敗北した将である霞だけが持つ重みも、きっと其処にはある。
「期待しているわ、霞」
「任せときぃ……って、秋斗ぉーっ! あんたそれウチの卵焼きや! 何さらしとんねんこのドアホ!」
「知るか、居ないのが悪い。偶にはマヨネーズ付けて食べたいんだよ」
「あほ言え! ウチは大根おろしと醤しか認めへんで! あ、華琳も季衣も流琉も凪も、ほななっ」
急いで動いた神速に呆気に取られながら、四人はそれぞれに苦笑を漏らした。
何処かすっきりした顔の凪が、華琳に話し掛ける。
「まだ自分では全く勝てません。強くなりたいのも、守りたいのも、見つめなおすいい機会を頂きました。あの人達をしばらく追い掛けてみようと思います」
「そう。よく見てよく学びなさい。あなたはまだまだ伸びる。ちなみに将のなんたるかを教えなかったのは自分で気付いて欲しかったからよ。与えて貰った成長では、いつか痛い目を見ることになる。思考を回しなさい。頭を使いなさい。ただ聞くだけではなく、考えてから聞きなさい」
「は。感謝を、華琳様」
「ボクは……」「私は……」
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