彼の為の優しい鎖
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練兵の時にふるい落としているはずで、徐晃隊がそんな半端モノを許すはずが無い。
将に守られる兵士など必要ないのだ。守られるだけの兵士など、黒麒麟の身体には相応しくないのだから。
季衣と流琉が気付いたのはその点。将が“兵士と共に戦う”という事の意味。
戦っているのは一人では無く、彼らと共に。それでいて散った命を掬って背負って、自分の力と為していくことが出来て初めて将となる。
それを理解せずして将にはなれない。個人の一騎打ちをするだけのお手軽な武人など、戦場には必要ないのだ。
――武人達だけの戦いで戦が決まることは無い。もしそれで決まるなら初めから将達だけで戦わせればいいのだ。
兵士が切り拓いたから、兵士が戦ったからその舞台が出来上がる。その散って行く命を背負えない将など、この曹孟徳の求める将では無い。
華琳は優しく微笑む。自分の元に集った将達はそれが出来るから、と。きっと成長した先でそうなっていくに違いない。
凪を見れば、難しい顔で唸っていた。凪も丁度、そのことで悩んでいたのだから当然。
「そう、あなた達は兵士の想いを知ったのね。ソレを知ったなら、きっとあなた達の両肩には命の重みが乗っているはずよ」
今までとは違って。華琳はそう締めくくった。
首を捻る季衣と流琉、凪は少しだけ驚いて秋斗達の方を向く。
「それはあの方たちの強さにも通ずるモノがありますか?」
「ええ。自分で気付けたのならまずは其処から始めなさい。兵の想いを知り、“自分の判断で殺した命”の重さを確認し、それを力として使う術を身に付ければいい。明を含めたあの五人はソレが出来るから、私の認める五将軍よ」
想いが刃に乗る。それぞれ色が出る部隊はそのまま将の力であり、彼ら兵士達の命が将を強くもする。
あの明でさえ、自分の部隊だけはクズのロクデナシと言いながら特別に信頼して、信頼を向けられている。故に、夕を失って中身の入った彼女は春蘭達と並ぶに足りる。
「背中というよりは剣と言いましょうか。
命を乗せていない剣にも、想いを宿さない剣にも重さは無い。当たり前よね。春蘭の剣には、どれだけの人の命が乗っていると思う?」
特に魏武の大剣が持つ責は大きい。今まで殺した命も、従ってくれる兵士も、そして……平穏に暮らす民の命も、全てその剣に乗っているのだ。
大きさが違う。違い過ぎた。強くなりたい、負けたくないと思っても比べるべくもない純然たる大きさがある。
「ま、確かにな。春蘭の剣はホンマに重い。なんでやろって思っとったけど……ウチとはちぃとばかし違うんやもんなぁ。
でもアレやでしかし。そのうち試合程度でも勝つつもりやけど、用兵と戦働きではウチが一番って言わせたるで華琳」
声は唐突に季衣と流琉の後ろから。
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