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ミョッルニル
7部分:第七章
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できればだがな!」
「トール!」
「トール様!」
 ロキもシャールヴィも叫ばずにはいられなかった。その赤い某は紅蓮の炎と化してトールに向かっていたからだ。それを受ければトールとて無事では済まないのは一目瞭然だった。
 しかしトールはそれを見ても微動だにしない。構えもしない。そこに棒が来たところでだった。
「なっ!?」
「まさか!」
 何とトールはその棒を右手で掴み取ったのだ。その鉄の手袋で以って。彼ならではの恐るべき芸当だった。瞬き一つせずにそれをやってのけたのだ。
「まさか掴み取るとは」
「何ということだ」
「これが雷神なのか」
「ゲイルレズよ」
 トールはその棒を己の方に手繰り寄せつつゲイルレズに声をかけた。その恐ろしい顔が紅蓮の炎に照らし出されさらに凄みのあるものに見せていた。
「面白い贈りものだな」
「くっ・・・・・・」
 ゲイルレズは怯えていた。既にここで勝敗は明らかだった。
「今度は俺からの返礼だな」
「返礼だと」
「そうだ」
 その凄みのある笑みでの言葉だった。
「受け取るがいい。この棒をな!」
「ゲイルレズ様!」
 トールが棒を渾身の力で投げようとしたところで彼の家臣が声をかけた。
「早く逃げられよ!」
「そこに!」
 別の家臣が指差したのは館の柱の裏だった。
「そこにお隠れ下さい!」
「あそこならば!」
「う、うむ!」
 ゲイルレズも必死だった。隠れなければ命がない。それを察した彼は慌ててその柱の裏に隠れた。しかしトールは棒を放ったのだった。
「無駄だ、そんなことをしてもな」
「その柱ならな」
 巨人達は今のトールの行動をまずは嘲笑った、
「棒も突き抜けることはできん」
「雷神も愚かなことよ」
「愚かかどうか」
 だがトールは不敵に立ち巨人達のその声を聞いていた。
「よく見ておくのだ。今な」
「ふん、無理だ」
「そんなことをしてもな」
 その間にも棒は突き進む。紅蓮の光と凄まじい唸り声をあげて迫る。そして遂には。鉄の棒は柱を貫き通してしまったのだった。
 轟音が館を支配し絶叫が木霊した。棒は柱を完全に貫きゲイルレズの身体に突き刺さっていたのだ。その顔を苦悶の色が覆っていた。
「馬鹿な、まさか」
「そのまさかだ」
 紅蓮の炎に身体を支配されていくゲイルレズに対して述べた言葉だった。
「貴様は俺を侮った。その結果がこれだ」
「侮った・・・・・・確かにな」
 身体はもう完全に炎に包まれている。彼はその中でそのことを悟ったのだった。
「わしは貴様の力を軽く見ていたようだ」
「そうだ」
 ゲイルレズに対して答えたのだった。
「だからこそ敗北したのだ。覚えておけ」
「無念・・・・・・」
 これが彼の最期の言葉だった。炎に包まれゆっくりと身体を倒れて
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