水と油と菊の花
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んを触らせてください」
「はい?」
「少しでいいですから」
「良いでしょう」
こいつめ、いつかぶっ飛ばしてやる。やっぱりこんなやつに断る前に触っとくべきだったか。でもま、これで思う存分勝手ができるならいいか。そう1人で頷いて、ギルベルトは震える人差し指をゆっくり、慎重に菊の頬へと持って行く。
つん、ふにっ。
……柔らかい。え、これ人だよな。本当にそう思った。少しでも力を加えれば、すぅっと指が通ってしまいそうで怖くなった。とにかく柔らかい。
ローデリヒが何度も菊をっつつくから、ギルベルトもムキになってつつく。そこでふと思った。なぜこの眼鏡は菊にひざ枕なんかしたのだろう。普通、頼まれない限り自分からはしないのではないか。しかも菊だって、頼んだわけではない。それならまさか…
「なぁローデリヒ」
いったん手を止め、ローデリヒを呼ぶ。が、ローデリヒは指をひっこめる気配も見せず、「何です?」とぶっきらぼうに答えた。
「何だよ。人と話す時くらい作業止めろっていつも言ってんの、おまえだろ」
こちらも指ツンツンを再開する。“負けてられっか”なんて断じて思っていない。
「それで、要件を早く言いなさい。今私は忙しいんです」
「坊ちゃん、菊のこと好きか?」
内容が内容だから、躊躇してはいけないと少し早口になってしまった。が、ほれ見ろ。ローデリヒの手が、あの何があっても止まりそうにない指が、今はピクリとも動いていない。少し残念な気持ちになった。
「え、図星? ズボシーなのか?」
「………………………………………………………………………………………………………」
何か言ってくれ。ボディーラングエージで訴えられても困るんだ。なんとなくはわかるけどさ。
手をパタパタさせて、握って上下に振って、頭振っての眼鏡飛ばし。
どうせ、「急になんてこと言うんですかそんなわけないでしょうこのお馬鹿さんが…!」とでもいったところだろう。
「じ、じゃあさ、菊同盟結ぼうぜ」
自分の鞄をたぐり寄せて、1枚の紙と万年筆をわしづかみにするギルベルト。口に万年筆のキャップをくわえ、鞄を机代わりに何かを書く。
「何ですかその“菊同盟”って」
「これ」
言葉より少し遅れてローデリヒに差し出されたのは、普段のギルベルトからは想像できないほど丁寧な字の並ぶ同意書だった。
「えっとな、菊に俺たち以外に手を出そうとするやつがいたら協力してたたくってもので。ああ、でもお前となれ合う気は全くといってないからな」
勘違いされたら困る、とどこかで思っていたのかもしれない。ギルベルトの同意書を持った腕は本人の意思に関係なく上下に振れていた。
「見せる気な
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