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水と油と菊の花
水と油と菊の花
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少し下に視線を移す。

「っ、……え?」

 ローデリヒの膝の上で、うとうととしている菊がいた。……ように見えたがけかもしれない。

 あぐらの体勢のまま菊のノートパソコンに近づき、マウスパットに指を置く。

 ハッキリとした視界で、ほぼ対角線上の菊をもう一度見た。あの眼鏡の膝の上で船をこぐ菊がいた。

「嘘だろ」

 認められん。ありえない。きっと何かの悪夢だ。

 今までずっとローデリヒを見て(睨みつけて)いたというのに気付けなかったとは。いや、それよりも菊がローデリヒの腕の仲で(そうにな)るとは。

 ギルベルトが頭を抱えて見ていないことをいいことに、ローデリヒは菊に何かささやき、うながす。

 そして悶えながらも菊の夢うつつな表情を見ようとギルベルトが顔をあげたときには、菊のためのローデリヒによるひざ枕の完成、っと。

 ……え、ひざ枕? ホワッツ?

 認めたくない。ありえなくていい。目を覚ませ、俺。




――5分後――

 

 静かだ。ギルベルトが黙るだけでこんなにも静かになるのかと、ローデリヒは心底感心していた。

 当の本人は発狂したいのを必死でこらえているため喋ることもままならない、という状態なのだが。

 しかし限界(たったの5分)に達し、小さく、あくまで小さく床を叩くと「…ぐ」と声を漏らした。

「きくもすこしはてーこーしろよ」

 精神力をすべて使いつくしたギルベルトの言葉は、もう何の感情もこもっていない。

 声があまりにも小さいからそう聞こえただけだろうか。だって菊が寝ているんだもの。天敵貴族メガーネのひざ枕で。

 ギルベルトがうなる理由も、それなのに小声な理由もそれだった。

「だったら俺だってやったのに、ひざ枕。…俺より坊ちゃんかよ」

 今更どうにもならないことだが、言わずにはいられない。その延長線のように、ギルベルトはまたぼやく。

「だいたい、あいつの何がいいのか…」

 また周りが一層暗くなる。だが暗がりの中でローデリヒの眼鏡が異様なほど光った気がした。

「そうですか」

 ローデリヒはあえてギルベルトにまで届くボリュームで言い捨てると、すぐ傍らに横たわる菊の髪を撫で始めたのだった。

 まぁ頭くらいだったら、と思ったのも束の間、ローデリヒは菊の頬を指でつつく始末。

 ギルベルトはローデリヒに殴りかかる衝動に駆られた。が、そうしたら菊が起きてしまう。その天使のような寝顔を守るべく、ギルベルトは握りしめた右手を筆舌しがたい気持ちでほどいた。

 仕方ない、下手に出よう。

「なぁ、坊ちゃん。俺にも菊触らせろ」

「何ですかその口のきき方は」

「スミマセンがローデリヒ様。菊さ
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