After20 残った者がすべきことは
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て片膝を突き、腹を抱えた。
『ちなみに今のは対インベス用の矢だ。覿面に効いたろう?』
『だ、れが…!』
ロード・バロンは杖剣を支えに再び立ち上がった。
『俺が折れない限り、お前が勝ったことにはならない!』
ロード・デュークは答えず、数度に渡ってストリングを引いた。
向かってくるソニックアローを叩き落とそうとして、気づく。この矢はホーミングアローだ。それも、一矢が分裂し、矢の弾幕となってロード・バロンに向かって来る。
先の対インベス用の矢で動きがにぶった体を、それでも動かし、縦横無尽に襲い来るホーミングアローを掻い潜ろうとした。
それでも無慈悲に矢は刺さる。
矢は刺さる。
矢が、刺さる。
紘汰や舞でさえ無力化したという謳い文句は正しく、矢が刺さった部位からオーバーロードとしての力が剥がれ落ちて行くのを感じた。
それはつまり、駆紋戒斗の命が削られていっていることを意味していた。
武蔵坊弁慶もかくやというほどに全身に矢が刺さってなお、ロード・バロンは屈しなかった。
『そろそろかな』
パキ、パキ……と、乾いた音を立てて表皮が落ちて行く。
ロード・バロンとしての自分を保てず、駆紋戒斗に戻ってしまう。
そうなる前に――
一歩を踏み出す。
『往生際が悪いよ』
ロード・デュークは再びソニックアローを放ち、その矢はロード・バロンに刺さった。だが、ロード・バロンの歩みは止まらなかった。
完全に肉薄してはいない距離で足を止め、杖剣を振り被った。
「オオオオオォォッッ!!」
――どうしてだろうか。
――あいたい、と、無性に、想った。
杖剣を振り下ろす。赤い衝撃波が生じ、ロード・デュークを袈裟切りにした。
『ば、かな……』
この男は、知略を巡らせることについて右に出る者はいなかっただろう。それゆえに己を鍛えることを怠った。だからこれは、駆紋戒斗にとって必然の勝利だ。
ロード・デュークが倒れ、爆散した。
――この戦極凌馬に酷似した男が何者か、最期まで彼には分からなかった。
戒斗は完全に人間の姿に戻りきって仰向けに倒れた。
刺さった矢は消えたが、削られた生気までは戻ってくれなかったようだ。
起き上がりたいのに体が痛みで言うことを聞かない。
(まだ、だ。咲と光実が舞たちを救いに行っている。俺が出口を用意しなければ……)
思えば思うほど、動かせない体が憎らしかった。
意識が霞んでいく中で、それでも戒斗は大樹に手を伸ばし――――
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