第四十九話 一時の別れその八
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「間違っても前から攻めない」
「今の貴女にも」
「そう、あんたは頭がいいからな」
また薊はこのことを指摘した。
「あたしの強さも見極めてるからな」
「慎重に。後ろから攻める」
「そのことがわかっているから」
「後ろから攻める、それはわかっていたんだよ」
「そう、私の策を見破っていたのね」
「まあ何処から攻めても察することは出来ていたさ」
薊のその六感でというのだ。
「あたしの勘は鋭いからな」
「勘と私以上の頭の冴えね」
「それであたしは勝ったってことさ」
「そういうことね」
「力だけじゃないからな、戦いに使うのは」
「そうね、ではね」
「ああ、これでな」
怪人の達観した声にだ、薊は穏やかな声で返した。
「さよならと言いたいけれどな」
「私達のことね」
「聞かせてもらえるな」
死ぬ間際ではあるがだ、薊は戦い前の話通りに怪人に問うのだった。
鈴蘭もだ、怪人と激しい戦いを繰り広げていた。
気だけでなく雷も刀から放っていた、そのうえで。
接近してだ、その雷を宿らせた刀でだった。
怪人に切りかかる、だが。
怪人もその攻撃を己の両手にそれぞれ一本ずつ持っている鞭で防いでいた。その怪人に対してだった。
鈴蘭は口元をほころばさせてだ、こう言った。
「いい動きね」
「接近戦でもというのね」
「ええ、かなりね」
こう言うのだった。
「やるわね」
「この程度はね」
怪人も鈴蘭に対して答えた。
「出来るわ、私もね」
「それなりの体術があるということね」
「そうよ、それにね」
「カードはまだある」
「そうよ、私を鞭だけとは思わないことね」
鈴蘭をだ、接近戦を繰り広げつつ見据えての言葉だった。
「それだけだと」
「それは何かしら」
「すぐにわかるわ」
ここでも言わないのだった。
「そう、すぐにね」
「貴女は今はカードは鞭だけ」
その両手に持っているその二つだ。
「そして両手はもう塞がっている」
「そこから言うのね」
「そう、つまりは」
鈴蘭は不意にだった、一旦攻撃を止めて。
真後ろに後方宙返りをしつつ跳んだ、するとそこまでいた場所に。
下からだ、ハエトリソウの巨大な葉が出た。その葉がだ。
不気味な音を立てて噛み締められた、それを見てだった。
鈴蘭は笑みを浮かべてだ、こう言った。
「こういうことね」
「よくわかったわね」
「攻撃は前からとは限らない」
「あらゆる方向からよね」
「そう、横や後ろから攻める方法もあれば」
それに加えてだった。
「下からもね」
「あるのよ」
「そして実際にね」
「こうしたけれど」
「読み通りだったわね」
「よくわかったと褒めておくわ」
怪人は得意気に笑って返した。
「そう
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