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美しき異形達
第四十九話 一時の別れその五
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「妙にな」
「それでなのね」
「さっきまでとは違うのさ」
 スピードも技のキレも力もというのだ。
「あたしはさ、だからこのままな」
「私を倒すっていうのね」
「そうさ、覚悟しなよ」
「いい攻撃ね。ただね」
「ただ?」
「それで勝ったと思うのは早計ではないかしら」
 怪人は声を笑わせてこう返した。
「少しね」
「そう言うんだな」
「私はまだ生きているわ」
 表情もだった、怪人はここで笑ってみせた。
「この通りね」
「生きているならか」
「やり方があるわね」
「戦いにもな」
「それを見せてあげるわ」
 怪人は薊に告げた、そしてだった。
 これまで防戦に使っていた両手に一本ずつ持っていた鞭を突如上に放り投げた、するとその二本の鞭のうちの一本が。
 薊の頭上で幾条にも別れしかも横にも何重にも連なった。それは網だった。
 刺のある網が薊に上から覆い被さった、そうしてその動きを止めてしまった。
「なっ、これは」
「見ての通り網よ」
 怪人は素手になっていたが余裕の顔であった。
「わかるわよね、このことは」
「まあな、あんたの言う通り見ればな」
 薊もその網の中で答えた。
「そしてこの網の中でか」
「わかるわね、動けば」
「これだけ刺があればな」 
 その網にも生えている無数の野薔薇の刺を見ての言葉だ。
「ちょっとでも足掻くとな」
「その刺達が刺さるわよ」
「それで無用な怪我をする」
「まさにそうなるわ」
「しかも、だよな」
「網はそれだけでは使わないものよ」 
 ただ獲物を動けなくするものではないというのだ。
「捕まえたらね」
「そこからだよな」
「止めを刺すわ」
 こう言って上を見上げた、するとそこには。
 まだもう一本の鞭が薊の頭上にあった、その鞭がだ。
 空中で槍になった、やはり無数の刺があるそれに。その槍が上昇の頂点に達したところで怪人は勝利を確信した笑顔で言い切った。
「あれでね」
「へえ、槍にもなるんだな」
「そうよ、私の鞭はね」
「それはまた便利なものだ」
「そしてその槍がね」
「あたしを串刺しにするってか」
「安心しなさい、苦しませることはしないわ」
 怪人はその目を細めさせて薊に告げた。
「私にはそうした趣味はないわ」
「脳味噌をぐさりかい?」
「心臓よ」
 脳ではなくそちらだというのだ。
「脳なんか貫いても鮮血は出ないわ」
「けれど心臓ならな」
「出るわ」
 その鮮血が、というのだ。
「私の大好きな赤い色のね」
「あんた自体が赤い花だからな」
「そう、赤い鮮血を噴き出してね」
「あたしは死ぬってか」
「そうしてあげるわ」
「そりゃまた劇的ないい死に方だな」
「さあ、今からそうなるのよ」
 怪人は槍が雷の様に落ちる
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