第八幕その六
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「大変だったからね」
「死ぬかもって思ったから」
「木の板の上に乗って何とか流れ着いたから」
「そうした経験があったから」
「ベッツイは余計にだね」
「こうしたことは注意しているの」
危険な目に遭ったからなのです。
「もっともあれは私のせいじゃなかったみたいだけれど」
「遭難は仕方ないよ」
それは、と答えたハンクでした。
「天候のことは」
「だからなのね」
「そう、それは仕方ないよ」
「それでもね」
「気をつける様になったんだね」
「もうああいう思いしたくないから」
こう思うからなのです、ベッツイは。
「用心する様にしているの」
「大変だったからね」
「若し運よくこの国に来ていなかったら」
「どうなっていたかわからなかったね」
「ハンクもそうだったわね」
「そう、僕もね」
言うまでもなくです、ハンクもそうでした。ベッツイとその時一緒だったので。
「一緒だったから」
「そうでしょ。けれどハンクは」
「用心深くないっていうんだね」
「私よりはね」
「うん、僕はね」
それでというのです。
「何でも注意深く、用心深くとかはないね」
「そうよね」
「ああしたこともあったけれど」
ハンクはベッツイに穏やかな声でお話します。
「それでも僕はベッツイ程じゃないね」
「穏やかでいるのね」
「用心深いことも大事だけれど」
ハンクの場合はなのです。
「落ち着いている方がいいから」
「ハンクはそう考えているから」
「うん、ベッツイは用心深くあってね」
「ハンクは落ち着いているのね」
「それでいいんじゃないから」
これがハンクの考えでした。
「僕達は」
「そうね、それじゃあね」
「それでいこう」
「私達は大抵一緒だし」
「旅の時も王宮でもね」
ベッツイとハンクの関係はドロシーとトトのそれと同じです、本当に切っても切れない友達同士なのです。
それで、です。ベッツイも言うのです。
「だからね」
「それでよね」
「そうしてお互いを助けていこう」
「私達がそれぞれの特性を活かしてね」
「これからもね」
こうお話してでした、ベッツイとハンクは笑顔で頷き合ってです。そうしてベッツイはナターシャにあらためて言いました。
「私はこうした考えだから」
「それで、ですね」
「真実の池までの道もね」
「用心していくんですね」
「若し何かあったら」
その時はといいますと。
「猛獣だったらね」
「その時は任せてくれるかしら」
アンがベッツイに答えました。
「私にね」
「アンに?」
「実は砂を持って来てるの」
それで、というのです。
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