明日への翼
05 PROMENADE
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では愛鈴と仙太郎と恵がちゃぶ台を前に出来上がるのを待っていた。
『美味しいお料理を作るコツはね、食べてくれる人の笑顔を思い浮かべることよ』
ベルダンディーの言葉が心に浮かんでいた。
仙太郎は美味しいって言ってくれるかな。
んふふ。
自然に頬が綻んでしまう。
もちろん、毎日食べているお弁当だってスクルドが作っているのだし、「美味しい」って喜んで食べてくれているのだけれども。
ご飯は静子が炊いたものだ。おかずだって前日の残り物を使うことが多い。
お弁当ではなく夕食を全部一人で作るのは初めてだった。
六年前は姉のベルダンディーが料理を作っていた同じ場所で、今度は妹のスクルドが好きな人の為に料理を作る。
ウルドは料理を作るスクルドを背後から見ていた。空中に浮いてコップ酒だ。傍らに一升瓶が浮いている。
「運命……か」
スクルドに聞こえないよう口の中で呟いていた。
そんな抽象的で不確かな言葉など好きではないし使いたくもないが、今のスクルドを見ていると、やはりなにか運命的なことを感じてしまう。
在りし日のベルダンディーと今のスクルドの姿が重なって見えた。
努力が報われたわね。
一級神になるためにスクルドがどれだけのことをしてきたのか、ウルドはよく知っている。
でも、まだまだこれからよ。頑張んなさい。
口には出さないけれど瞳には優しい色があった。
スクルドは流行歌を口ずさみながら手を動かしている。
大切な人の為に食事を作る。
楽しくて、嬉しくて。
お姉さまもこんな気持ちだったのかな。
鮭の切り身を焼いたものと付け合せのキャベツの千切り、玉子焼き、大根とわかめのお味噌汁。肉じゃが。たくあんときゅうりの塩揉み。炊き立てほかほかのご飯。
「美味しいっ」
仙太郎の笑顔と言葉に胸がいっぱいになった。
頬が染まった。
作ってよかったと思う。また作りたいと思う。
お姉さまもきっと同じだったのね。
「うん、美味しいわ。腕を上げたわね」
「お母様仕込みだもの……でもほんとに美味しいです」
「当然!この一級神の天才スクルド様が作ったんですもの!」
腰に手をあてて得意そうに胸を張る。
天才スクルド様は料理でも完璧なのよっ!
後ろでウルドは苦笑していた。
言わなけりゃもっといいのに。
食事の後片付け。
愛鈴は後ろ頭を掻きながら太陽みたいな笑顔で笑う。
「──本当に今夜は助かりました」
恵やウルドの料理はとてもじゃないけど食べられないし、インスタントやレトルトの食事は初めは珍しかったのだが、すぐに飽きてしまった。
「うん、たまに来てくれると助かるわね」
ウルドの同意にスクルドの溜息。
「判ったわ──毎日は来られないけれど、週末、土曜日の夜だけなら来て
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