明日への翼
05 PROMENADE
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た。
スクルドはスクルドで歌うことが楽しくて気持ちいいらしく、一度歌い終わっても、また初めから繰り返し歌っていた。
「先生、あの、授業終わってしまったんですけど」
スクルド本人に指摘されてようやく女教師は我に返った。
授業終了のチャイムが鳴ってしまったのにも気がつかないでスクルドの歌に聞き入っていたらしい。他の生徒たちも同様だった。
「えっ、ええ、そうね。続きはこの次ってことで」
仙太郎の苦笑。
やれやれ、こんなことになるのではと思っていたが。
放課後の教室。
既に部活に出ている者や帰ってしまった者がいるので教室の中は閑散としていた。
スクルドと仙太郎はクラス委員長の古手梨花を手伝って、クラスのアンケートの取り纏めをしていたので、少し遅くなってしまったのだった。
二人が鞄に教科書やノートなど詰めていると、女生徒が一人、声を掛けてきた。
上級生らしい。
スクルドにとっては初対面だった。
「スクルド・ノルンさんね」
落ち着いた眼差しと物腰。良家のお嬢様って感じだ。
だけど、どこかであったような気がするのはなぜだろうか。
「はじめまして、私、合唱部の部長をしています、松原利奈といいます」
「はじめまして」
礼儀正しい態度にスクルドも礼で返す。
「以前は妹の梨沙がお世話になりました」
「梨沙がおせわに……って?」
「六年前はよく遊んでいただいたそうで」
梨沙ちゃん?
「梨沙ちゃんのお姉さん!」
他力本願寺の近所に住んでいた少女だった。姉のベルダンディーを「ベルママ」言って慕って遊びに来ていた当時四歳の女の子。今は十歳になっているはずだ。
スクルドの脳裏にもみじのような手と太陽のような笑顔の女の子が浮かんでいた。
利奈本人とも面識はあるのだが。まさかこんなところで再会するとは思ってもみなかった。
「はいっ」
にっこりと笑っている。
梨沙の笑顔と重なって見えた。
「突然引っ越してしまわれて、梨沙、ひどく寂しがってましたわ」
「ごめんなさい……」
消え入りだけに頭を下げる。
「あなた達にも事情があったのでしょう。今日はあなたにお話がありますの」
「話って……」
「あなた、合唱部に入らない?」
突然の申し出ではあるが、こんなことは初めてではない。先日も美術部からオファーがあったばかりだし。
「せっかくのお誘いですけれどあたしは何処の部にも入るつもりはありません」
「はっきり言うのね。気に入りましたわ」
やれやれ、逆効果のようだ。
「今日はこれで。また日を改めてお願いに伺います」
背中を向ける利奈だった。肯定の答えを聞くまで何回でも誘いにきそうだ。
家路をたどる二人。
季節柄まだ太陽は沈まない。
「さっきの話だけれどさ、スクルド」
「
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