明日への翼
05 PROMENADE
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しだ」
「もぉ、しっかりしなさいよっ」
そんな大事なものをしかも今更気がついててどうするのっ。
「参ったなー。せっかく課題済ませてあるのに」
「しょうがないわねぇ、取ってきてあげるわよ」
──取ってくるって。
とげのある言い方だが、何処となく嬉しそうに見えるのはなぜだろう。
がたん、と椅子を引いて立ち上がる。
教室を出て行くスクルドの後姿にクラスメイトの一人が首を傾げている。
次の授業開始まで後十分もないのだ。間に合うわけがない。
「彼女、ノートを取って来るって、言ってたよな」
「聞き間違えじゃないのか?」
問われて慌ててごまかす仙太郎だった。
学校には転移術に必要な水場は多くあるけれど、一番人に目撃される確立の少ない所と言えば何処か。
スクルドは女子トイレの個室の中で苦笑していた。
さすがに水洗トイレの水で転移するのは抵抗があるようだ。──では、と、個室から出て辺りを見回している。
掃除用具を入れたロッカーを開いてバケツを持ち出しすと半分ほど水を入れた。
蓋を閉めた便器の上に静かに乗せた。
戻ってきたスクルドは、手の中に小さくした仙太郎のノートを持っていた。
物理の担当が教室に入ってきて、開始の挨拶。
起立、礼、着席。
一連の動作のわずかな隙に仙太郎の机の中に押し込んでいた。ノートは机の中で瞬時に元の大きさに戻った。
「仙太郎、もう一回机の中探してみれば?」
軽くウィンク。
「え……ああ、あるよ。持って来てたんだ。探し方が悪かったのかな、よかった」
「そうね、よかったわ」
仙太郎の役に立てて。
にっこりと快心の微笑だった。
さて、本日最後の授業は「音楽」だ。
特別教室に移動した。
クラス対抗の合唱コンクールがあるので、本日はその下準備にと生徒達のパート分けをすることになっていた。担当の女教師が一人一人歌わせてそれぞれパートに分けていくのだ。
前の席から順番に歌わせていく。
初めて聴くわね。仙太郎の歌。
仙太郎の順番になった。立ち上がって歌う。
安定感があって伸びのあるボーイソプラノ。
へぇ、うまいじゃない。今度カラオケでデュエットもいいかな。
歌い終わって椅子に腰を下ろす。
しばらくしてスクルドの順番が回ってきた。
「では、スクルド・ノルンさん」
「はい」
立ち上がって姿勢を正して課題の歌を歌いだした。
音楽室に流れるスクルドの歌声。
天上界でも一、二を争う歌姫、歌の技量の持ち主、ベルダンディーが先生だ。
もちろん、スクルド自身の努力と才能もあったのだけれど、今では姉に負けないぐらいの歌上手になっていた。
女神の歌声。
女教師も生徒達もまるで時間が止まってしまったかのようにスクルドの歌に聞き入ってい
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