明日への翼
05 PROMENADE
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「トラックレースやロードレースじゃだめなの?」
「考えたことはあるけど……今の奴を買い換えないといけないし、親に負担を掛けられないしね」
仙太郎の性格だと、ファッションで乗るコンフォート系ロードバイクでは気がすまないし、であるなら相当なお金が掛かるのは必至だ。小学校の時に乗っていたBMXは既に身体に合わなくなっていて、今乗っているのは中学時代に買った二台目になる。以前のものは倉庫に大切にしまってあるのだが。
「今更って気もするんだよね、どうせやるならこのままBMXを続けたい」
スクルドの含み笑い。
「ん?」
「仙太郎ってさ、そんなところ螢一に似てるよね」
「螢一?スクルドのお姉さんの恋人だった人?」
「自分のやるべきこと、やりたいこと、妥協しないで諦めないで何処までもまっすぐに追いかけてく……そっくりだよ」
「かなぁ」
「──素敵だと思うわ」
隣で九十九がむず痒そうな顔をしていた。
「こぉら!九十九!」
怒鳴りつける声に三人が振り向くとクラス委員長の古手梨花が立っていた。
小柄で黒髪を日本人形のようにおかっぱに切り揃えて楚々とした見た目だが性格は真逆だった。言うべきことは目上の者に対しても遠慮会釈なく言ってのけるし、それがまた正論だから反論も出来ない。先生達も一目置く存在だ。いろんな意味で。
つかつかと九十九に歩み寄って胸を掴む。九十九より身長が五センチも低いのであまり絵にならないが。
「君には自殺願望があるのか?」
「なにをいきなり」
「若い身空で馬に蹴られて死にたいと見える」
「話が飛躍しすぎてるぞ、俺はただ朝の挨拶と世間話をだな……」
「少なくとも私には違って見えた」
「裁判長!」
九十九は仙太郎に向けて手を上げた。
「証人としてスクルドさんの証言を求めたいのですが」
仙太郎は苦笑に失笑を混ぜてスクルドに発言を促した。
「梨花、手を離してあげて。みんなで仲良く学校に行けばいいじゃない」
何だが小学校の低学年に対する台詞みたいだ。仙太郎がフォローを入れる。
「まあ……変に気を使われても、こっちとしても肩が凝るし……」
「君達がそういうのならここは下がっておくが」
ともかくここで立っていても学校が来てくれるわけじゃない。
学生の本分を果たすべく通学路を学校へと辿っていった。
校舎が近づくに連れて学生達の姿も増えてきた。
おはようの挨拶が交わされる中、九十九が話を切り出してきた。
「さっきの話だけどさ、やっぱり、スクルドが何処の部活にも入らないで帰宅部ってのはもったいないと思うんだよな」
梨花が同調する。
「私もそう思う。スクルドは成績が良いのだし人当たりもだ。体育会系以外なら何処に行っても良い結果をだせると思うのだが。本当にやりたいことはないのか?」
「先
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