明日への翼
05 PROMENADE
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女性の体型だ。年相応に膨らんだ胸は、可愛らしいピンクの水玉のパジャマを内側から押し上げていた。
室内には小さな本棚と箪笥、勉強机の座卓。机の上には可愛らしいスタンド。
立ち上がって南側の大きな窓に向かう。
快晴の空が広がっていた。昇ってきたばかりの朝日が猫実の街を照らしている。
七月終盤になって梅雨前線は遠ざかり夏は本番といったところか。
早朝だから風はまださわやかだが日差しは強い。
「今日もいい天気になりそうね」
──あれから六年、またこうして猫実の街を眺めることが出来た。
ベルダンディーと螢一は天上界で今頃どうしているだろうか。
階下へ降りて洗面所で洗顔をして台所に入った。
「おはよう、スクルド」
「おはようございます、お母様」
「じゃあ、いつものようにお願いね」
「はい」
仙太郎の母親である静子を手伝って朝食の準備とお弁当の用意。学校で仙太郎と二人のものと、この家の主人川西孝雄が職場で食べるものだ。
基本的に朝食は静子がお弁当はスクルドが作っている。
料理の腕は姉仕込みだ。実によどみなくてきぱきとこなしていた。昔の機械ばかりに頼っていたスクルドとは見違えるようだ。
朝寝坊の仙太郎を起こしに行ったついでに自分も登校の準備を済ませてしまう。
そうしているうちに父親の孝雄も起きて来て四人で朝食を囲んだ。
ひと月ほど前から続いている川西家の朝の風景だった。
「やっぱり、家の中に女の子がいると華やぐよなぁ」
孝雄のやに下がった言葉に静子がちょっときつい眼で睨む。
スクルドは少し照れくさそうに首を竦めている。
棘のある静子の台詞。
「若くなくて悪うございましたねぇ」
「あ、あれ?僕何か言ったかな?」
夫婦喧嘩は何とやら。いつものことなのでスクルドも仙太郎も仲裁にすら入らない。
登校の時間が来て二人は仲良く出かけていく。
二人とも既に夏服であった。仙太郎は白の半袖のオープンシャツの下にTシャツ、スクルドは女性用の白のワイシャツに細いリボン。どちらも冬物とデザインは同じだがずっと生地の薄い夏物のズボンとスカート。
学生鞄を手に学校まで歩いて十五分。
他力本願寺とは仙太郎の家を挟んで正反対の方向にある県立猫実南高校。二人は二年生で同じクラスなのだ。
並んで歩く仙太郎の溜息。
「どうしたの?」
「いや……三時限目の英文法、テストだろ」
「なんだ、仙太郎、それで朝からブルー入ってたのね」
クスクスと笑い出す。
「だってさ」
「このままの成績だと夏休みに補習ってことも」
「怖いこと言わないでくれよ」
しかし、事実だった。
仙太郎は理数系は得意だが文系はいただけない。特に英語は壊滅的だ。
「スクルドはいいよな、苦手な教科がなくて」
「ぼやかない
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