第十一話:二刀流/是、射殺す百頭
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「ちょっと、あなたねぇ…」
「て、てめぇなぁ…」
左右から爆発寸前の声を出すアスナとクラインを片手で、不気味な笑みを浮かべるユメを視線で制する。
「長らく自分らの保身の為に攻略作戦にも参加して来なかった腑抜け共がよく言った。戦力の増強はこちらの望む所だ。同じ攻略組の好として、くれてやろう」
レンの物言いに、すかさずコーバッツが怒りに身を任せようと腹に力を込めるも、しかしそれはレンの向ける射殺すような眼光によって飲み込むことになった。
「ボスにちょっかいを出すのなら止めておいた方がいい。兵も疲労しているし、何より指揮官が力不足だ」
「それは私が判断する。加え、私の部下はこの程度で音を上げるような軟弱者ではない!」
レンからマップデータを受け取ったコーバッツは怒りの籠った目を彼に向ける。
「お前、死ぬぞ」
レンの最後通告に、コーバッツは答えなかった。
そのまま踵を返して部下の下まで戻ると、すぐ様彼らを立たせて二列縦隊に整列させる。
コーバッツは先頭に立つと、片手を上げて振り下ろした。十二人はがしゃりと武器を構え、重々しく装備を鳴らしながら進軍を再開した。
「……大丈夫なのかよあの連中…」
軍の姿が完全に見えなくなって、クラインが気遣わし気にそう言った。
気に入らない相手でも一定の心配はするのは、彼の美点だ。
「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど…」
「いや、奴らはやるぞ」
アスナの言葉をきっぱりと否定して、レンは一団へ向き直った。
「ああいう奴らは先々の事を見通すことはできない。精々、ボス討伐の報酬の分け前のことしか頭にないさ。
だが、奴らとてこの城を攻略すると決めた仲間だ。オレは奴らを追う」
「……ハァァ。そうだな、仲間は多い方がいいもんな…」
「レンが行くなら私も行くよ」
どうやら、ここにいる人間は全員お人好しらしい。
「さあ、行こうか」
† †
道中、運悪くリザードマンの集団に遭遇してしまったためにレン達が安全エリアから最上部の回廊に到達する頃には既に三十分が経過していた。途中で軍のパーティに追い付くことはなかった。
「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」
おどけたようなクラインの声に、しかし皆が浮かべるのは神妙な表情だ。
あの指揮官が、容易に撤退を指示することはないのは簡単に予想できる。
半ばほどまで進んだ時、唐突にレンが地面を蹴った。
その直ぐ後、微かに、しかしハッキリと悲鳴が聞こえた。
「あぁぁぁぁぁ………」
十中八九、それは軍のパーティの一人によるものだろう。
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