八十六 混然たる森の中で
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浮かべる。口に咥えた千本がやる気なさげにゆらゆら揺れた。
「先に行っててください。すぐ追いつきますから」
ハヤテの言葉に、三人は顔を見合わせる。念の為に周囲を見渡すが、敵の気配も感じ取れず、至って平和である。
それにもうすぐ木ノ葉隠れの里だ。
「わかった。里で待ってるからな」
単独でも大丈夫だろう、と判断したライドウが頷く。
「そちらの道よりもこっちのルートを使ったほうが里に近いと思いますよ」というハヤテの口添えを聞き入れ、ゲンマ達は地を蹴った。助言通りのルートで木ノ葉の里へ向かう。
三人の後ろ姿をハヤテはじっと見送っていた。姿が見えなくなり、気配も感じ取れなくなってから、再び彼は天を仰いだ。上方で生い茂った葉叢がハヤテの顔に陰を落とす。
刹那、無数の若葉が一斉に彼の視界を覆った。
とても開けていられない眼をなんとか抉じ開けると、春の鮮やかな緑の合間に時折美しい金が現れては消える。
唐突な緑の嵐は終わるのも突然だった。あれだけ多く風に煽られていた木の葉は一枚たりとて地に落ちていない。
代わりに忽然と現れた少年が枝葉の間から射し込む陽射しに眼を細めていた。
「なかなか板に付いてきたね」
「それはパイプ役として?それとも、」
ハヤテの問いに、彼は穏やかに微笑んだ。空よりも蒼い双眸がハヤテの心の奥底を透かし見るかのように、美しく煌めいた。
「両方だよ」
波風ナルと似通った金の髪が軽く風に揺れる。
それは緑の濃淡で満ちた森の中で、一際鮮やかに輝いていた。
「お久しぶりですね…ナルトくん」
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