八十六 混然たる森の中で
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ナルの決意がひしひしと、土壁を通して伝わってくる。やがて一人が踵を返した。
「――行こう」
ナルの言う通り、先に行こうとするネジを「本気か!?」とキバが呼び止めた。
「相手は一人だ。五人でかかれば、」
「此処で時間を食えば、その間にサスケは国境を越える。そうなればもう俺達だけの力ではどうにもならなくなるぞ」
ネジの正論に、キバは悔しげに唇を噛み締める。戸惑ういの達の前で、「それに、」とネジはつけ加えた。
「あいつは…ナルは、俺に勝った。そして救ってくれた。だから―――大丈夫だ」
瞳を閉ざす。瞼の裏に甦るのは、かつての自分。
日向一族の在り方に失望し、運命なのだと諦めていた。
空を自由に飛びたいと願う一方で、籠から出なかった。
そんな、闇の中にいたネジを救ってくれたのがナルだった。
運命とは自分の手で切り開くものなのだ、と身を以って教えてくれたのだから。
(大丈夫だ。俺より良い眼を持ってる、お前なら…)
何もかもを諦めていたあの頃よりもずっと良い眼で、ネジは見えないはずの土牢の中を見つめる。
その隣で、固く瞳を閉ざしていたシカマルが苦渋の決断を下した。
「……無茶だけはすんじゃねぇぞ、ナル」
「おう!」
土壁の向こうから返ってくる、勇ましい声。
その声を背景に、木ノ葉の忍び達は地を蹴った―――ナル一人を置いて。
次郎坊は、土牢から離れゆく木ノ葉忍び達の気配に眼を細めた。
そうして、目の前の少女をまじまじと見据える。
(…先に行かせて正解だったな)
既に此処から遠ざかっているであろう仲間の背中を思い浮かべつつ、次郎坊は改めて【土牢堂無】を唯一破れる金髪少女を観察した。
彼と酷似したその姿故、聊か躊躇する。己でさえ戸惑うのだ。他の者の動揺は顕著だろう。
君麻呂と多由也は一度木ノ葉の中忍試験に参加している為、彼女の容姿に狼狽一つしなかったものの、いざ闘うとなると話は別だ。
だからこそ、次郎坊は此処にいる。
波風ナルを足止めする、その為に。
地上から突兀と隆起した巨木の根。
地面を這う根の一つに腰掛けて、男が大きく息をついた。
「こんなに任務が長引くとは思わなかったな…」
一様に疲れた顔を見せる彼らは、今し方任務を終えたばかりの木ノ葉の上忍達。
並足ライドウ・不知火ゲンマ・シズネ……そして月光ハヤテ。
自らの里へ帰る最中だった四人は、此処で暫し休息を取っていた。
ふ、と空を仰いだハヤテが眉を顰める。
天蓋のように枝を広げる大木の葉叢がほんの一瞬ざわめいた。
「どうした?」
「いえ…さっきの道で落とし物をしたみたいです。ゴホッ」
「おいおい…」
ゲンマが呆れた表情を
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