五十七話:揺ぎ無き信念
[6/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に似てる者?」
そう言って、小さな指でルドガーを指差すオーフィス。何気ない行動だが指を差されたルドガーは生きた心地がしなかった。
「そうだ。私はルドガーと戦いたいのだが邪魔が入ってね……私の願いを聞いてくれるかい?」
「わかった。我、ヴィクトルの力になる」
「ありがとう、オーフィス」
礼を言い、本人も気づかぬままに優しげな笑みを浮かべながら軽くオーフィスの頭を撫でるヴィクトル。撫でられたオーフィスは気持ちよさそうに猫のように目を細める。そして、撫でられるのが終わると少しだけ張り切ったように抑揚のない声に嬉しさを滲ませてヴァーリ達とイッセー達に向き直る。
「我、がんばる」
それだけ呟くと軽く腕を振るうオーフィス。すると、線を引く様にヴァーリ達が立っている場所以外の地面がいとも簡単に消し飛び、地層がむき出しになる。黒歌はその光景に世の中には理不尽という物が確かに存在するのだと理解し、ルドガーの元に行こうとすれば蚊でも殺すようにやられてしまうだろうと悟る。
「これは……今の私だと戦っても勝負になりそうにないわね」
ヴァーリは己の夢の為にいつかは世界最強であるオーフィスとも戦う事があるだろうと思っていたが格の違いを見せつけられて夢の実現にはまだまだ時間がかかりそうだと苦笑いを浮かべながらここから先には立ち入り禁止とでも言いたげに引かれた線を見る。オーフィスは黒歌達が入って来ることがないことを確認すると満足したのかその場にちょこんと座りルドガーとヴィクトルを眺める。
「ルドガー……」
「黒歌、悪いけど俺からも頼むよ。こいつとの戦いは俺に任せてくれ」
「……分かったにゃ。絶対勝ってよね」
「ああ」
心配そうに自分を見つめる黒歌にルドガーが自分だけに戦わせてくれと頼み込む。黒歌は何か言いたそうな顔をしたが、それを飲み込んでエールを送るだけにとどめる。ルドガーはエールに力強く答え、背を向ける。黒歌は愛しの人の背中を見ながら無意識の内に祈るように手を胸の前で組み合わせてしまう。悪魔であっても何かに祈らずにはいられなかった。愛する人にどんな形であっても生きて帰って来て欲しいと。
ヴィクトルとルドガーはしばしの間、様々な思いを胸に抱きながら見つめ合っていたがやがて、どちらからともなしに時計を取り出し鏡合わせのように構える。ルドガーは真鍮の時計を、ヴィクトルは黄金の時計を。
「これで、今度こそ終わりにしよう。ルドガー・ウィル・クルスニク」
「元々そのつもりだ。“ルドガー・ウィル・クルスニク”」
二人が同時に黄金の光に包まれてその姿を変える。全身を鎧の様な装甲に覆われた骸殻の到達点、フル骸殻。二人の姿で違う点はその色だけ。希望を表すような金色のラインを持つルドガー。絶望の末に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ