五十七話:揺ぎ無き信念
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やけに芝居がかった声で告げるヴィクトルに対してルドガーは何も言わずに今度は指揮者のサーベルに持ち替える。軽く指揮棒を振るうとヴィクトルを中心に巨大な水の渦が生まれる。そして、ルドガーが左腕を振り上げると巨大な水柱が荒々しく立ち上がり無抵抗なヴィクトルを飲み込んでいったかと思うと凍り付き一種の彫刻の様な優雅さを醸し出す。
「聞こえるかどうかは分からないが言っておくぞ。お前が殺したジュード達は俺の仲間とは全くの……別人だ!」
ルドガーは確固たる意志を持って俺とお前は違う人間だと宣言すると共に力強く腕を横に振るう。その瞬間、巨大な氷柱は凄まじい音と共に砕け散っていく。
「これでお終いだ。グランドフィナーレ!」
砕け散った氷は光を浴びてまるで煌めく宝石のように美しく辺りを照らしていく。その光景を作りだしたルドガーだけでなくヴァーリ達やイッセー達も見惚れたように見つめていたが、突如として現れた余りにも馬鹿げた力を感じて一斉に細かな氷が舞い上がり見通しの悪い中心地に目をやる。
「なんだ……このふざけた力は? フル骸殻でもこんな力は出せないぞ……」
初めはヴィクトルの力かと思ったルドガーだったがヴィクトルとは明らかに質の違う無限とも呼べる力に恐れおののく。そして、宙に舞った氷がゆっくりと地面へと落ちていくにつれて立っている者の姿があらわになっていく。まず初めに見えたのは黒色だった。どこまでも黒く、まるで一切の光を奪った闇のような結界があった。
その結界が解かれると始めにヴィクトルの姿が見え、次に彼の足もとに立つ肌以外が全て黒い少女の姿が見えてきた。少女の姿を見た瞬間にルドガー達は血が凍るような感覚に襲われた。その可憐な姿に似合わぬ圧倒的な存在感と力が確かな敵意をルドガー達に向けられていたのだ。
「我……ヴィクトルをイジメる奴、許さない」
以前であれば虚無以外何も映していなかったであろう黒曜石の様な瞳に怒りを灯した無限の龍神―――オーフィスがそこに立っていた。
「オーフィス、何をしに来たのだ。私には助けなどいらない」
「でも、ヴィクトル、イジメられてた」
「戦いなのだ。仕方のないことだ。お前は家に帰っていなさい」
「やだ。我、ヴィクトルを守る」
オーフィスが来たことはヴィクトルにとっても予想外の事であったらしく若干戸惑いながら帰るように促すがオーフィスは言う事を聞こうとはせずにヴィクトルを守ると言って聞かない。子供には殺しの現場を見せたくないという思いを抱くヴィクトルは内心頭を抱えたい気分であったが何とか頭を働かせてオーフィスにあるお願いをする。
「私を守りたいのなら、私とルドガー以外を戦いに入ってこられないようにしてくれ」
「ヴィクトル
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