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101番目の舶ィ語
第二十二話。選択の時
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要があるのだから。
だから俺は2人に向き合う機会を与える。

「うん……解った」

『妖精』の音央にしてみれば『無知』という罪と向き合う形になる。
本当は辛いし、苦しいだろうが……それでも向き合わないと始まらないんだ。
2人の物語は。
それを知っているのか、茨の壁の中から自分が傷つく事も恐れずに音央は一歩を踏み出した。
向かう先は本物の音央の所だ。

「あっ……」

近寄ってくる妖精の音央に、本物の音央は一瞬ビクッとしたが、それでも逃げずにその場に留まる。

「……ごめんね、気づかないまんま、ずっと一人にしてて」

妖精の音央にしてみると、言いたい事はたくさんあるだろう。
自分の大切な人達を、妖精の音央にしてみれば『勝手な判断』で消していた相手なのだから。
______だが、音央のその瞳に怒りや憎しみといった負の感情はない。
浮かんでいるのは、いかにも音央らしい強がっている笑顔だ。

「これからは、あたしとずっと一緒にいましょ? あたしはロアだけど……でも、消えたくない。あたしを生み出してくれた貴女を消してまで生きたくない」

妖精の音央が血だらけになった手を本当の六実音央に差し出した。
その手を見た、音央は涙を零して……。

「でも……でも、私……っ」

「……うん、多分あたしも貴女も絶対に許されないし、今後も生きていくために誰かを消さなきゃいけない時だってあるかもしれない。でも、なんかもっと別の方法もあるかもしれないし……悪いヤツだけ神隠しにする、っていうのもアリかもしれないわよ?
だから、そういうのをもう一人で決めないで……一緒に、考えよう?
あたし達が消えない方法。
一緒に……仲良くやっていける方法を」

「……一緒にいても、いいのですか?」

「しゃあないもん。勝手に人、消されまくったりするよりマシだし……」

プイっと、顔を逸らしてそう言う音央。
音央が逸らした視線の先は……。
俺や一之江がいる方向だ。
つまり。
音央はきっとこう言いたいんだ。
大丈夫!
私達はもう、一人じゃないよ……と。

「助けてくれる、超御節介な仲間もいるみたいだしね?」

そう笑いながらウィンクする音央。
ああ、流石は雑誌モデル。
詩穂先輩と並ぶ学園のアイドル的な存在だけあって、やっぱり可愛いな。

「うっ……ひくっ……うあああああああああ??」

そして……泣き虫な『神隠し』の音央は、大泣きしながら音央の手を取ると、その胸に顔を埋めて抱きついた。

直後、チャリーン、というDフォンのメロディーが鳴って。
俺は『神隠し』のロアを物語に出来た事に気付いた。


「『妖精の神隠し(チェンジリング)』のロア、取得だな。
これにて一件落着______かな
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