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101番目の舶ィ語
第二十二話。選択の時
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るために。

「あのさ、2人とも」

「……はい」 「……何よ」

同時に前後から聞こえてきた音央の声、
俺は2人に向かってなるべく優しい声色で語りかける。

「君達も俺の物語にならないか?」

それは俺がこの夢に入る前から決めていた事だ。

「俺はどちらかを選ぶとか、どっちも選ばないとか出来ない。音央は……ああ、妖精の方のな。君は昔からの友人だし、一緒にいて楽しいし、君にバカって言われると何だか懐かしい気持ちになってホッとするんだよ」

「……バカって言われて嬉しそうにするとか、ヘンタイなんじゃないの……バカ……」

弱々しくも変事をしてくれた音央を見ると、やっぱり懐かしくてホッとする。
ああ、そうか。
俺は音央にアリアの面影をみていたんだ。
いや、『妖精』の方の音央だけにではない、な。

「そして、黒髪の方の音は……俺に優しくしてくれて、幼馴染みの武装巫女を思い出せたよ。
似てるからね雰囲気が……鳥の籠に入れられていた境遇とか、自己主張しないその性格とか。
そんな子を1人きりにさせるなんて俺には出来ないんだ」

もっとも、彼女と白雪は境遇こそ似ているが違う。
白雪は星伽(ほとぎ)の掟に従い、自由を知らずに生きていた。
そしてこちらの……『神隠し』の音央は世界から自由を奪われて生きている。
どちらの方が良い悪いのかは俺には解らんが……解っている事が一つだけある。
境遇こそ違えど、そんな子だからこそ俺は助けたい。
その気持ちに嘘偽りはない。
それに、こちらの音央なら俺が他の女子と会話するだけで襲いかかってきたりはしない……はずだしな。

「でも、それは……貴方を消してしまう為の優しさで……」

確かに彼女のその行いは……甘い言葉で獲物を食べる赤ずきんちゃんの話にそっくりだ。
でも、誰かを騙す為の優しさだったとしても、優しくされた事実は変わらずに残るんだ。
その時感じた気持ちは……嘘じゃない。
例え裏切られると解っていても。
それが嘘じゃないのなら、それはそれでいい時だってあるのだから。

「助けて欲しかったんだろう?」

「…………」

「俺は、どんなに悪い子だろうと、とりあえず助ける。償いとか、罰とか、そういうのは……消えたり、死んだりする事じゃないからな。
その気持ちを持って、後悔したり、苦しんだり、反省したり、悪夢に苛まれたりしながら、ずっと生きていく事が本当の償いだ」

それをしない、出来ない純粋な『ロア』みたいなオバケもいるが……。
この音央は人間で。
あっちの音央は人間と同じ感覚を持っている。
なら、2人共……ちゃんと罪に向き合って、その罪を背負って生きていける。
俺はそう信じたい。
いや……信じている。

「君が出してくれた御飯も
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