金貨四十枚と姉
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、何者かに遮られていたけれど、あたしはあたしに声をかけてきたその人物を目認することを拒絶するように、睫すら動かすことなく低い声で言った。
「・・・金貨、四十枚」
「なんだって?金貨四十枚?おいおい、冗談はいけねぇぜ。せいぜい銀貨一枚・・・」
「触るんじゃないわよーーーーッ!」
腕を掴んできた男を思わず背負い投げしてから、あたしははっと我に返った。そして逃げた。ダッシュで。
ち、違う。何か違う。嫌悪感から反射的に投げ飛ばしてしまったけれど、これは違う気がする。いや、あいつは金貨四十枚なんて払えそうもなかったから、いいってことにしておこう。というかあたしを男と思って声かけてくるなんて、どういう神経してんの・・・。
騒ぎになる前に逃げ出せたようで、あたしはまた別の、同じような路地のところで立ち止まって息を整えた。
いや、いけない。これはいけない。声かけてくる男を片っ端から投げ飛ばしていたら、いつまでたっても金貨四十枚なんて稼げそうもない。
ニイちゃん、か・・・。
あたしはふと思い立って、いつも高く結い上げていた髪を解き、ばさりと肩に落とした。
これで少しは、女っぽく見えると良いけれど。
「うへ、ニイちゃんいいなぁ。客じゃないだろ?うへ」
そう思ってたらまた早速お声がかかった。残念ながら兄ちゃん認定だが。
とても生理的に受け付けない声だったけれど、えり好みをしていられる余裕はあたしにはない。
「いくらだぁ?うへへへへ・・・」
「金貨四十枚。びた一文負けない」
「そりゃあむりだぁ。うへ、うへ、うへ・・・」
「うへうへうへうへおまえはルッペンか!」
触られたわけでもないけれど、あまりの気持ち悪さに、気がつけばまた手が出ていた。足下には地面とキスをし、鼻血を出しながら伸びている…ルッペン男。あたしはまた逃げる羽目になった。
気を取り直して三度目の正直・・・と思ったら、今度は全く声がかからない!
汚いものでも見るようにあたしを睨み付けながら通り過ぎる人たち。一時間たち、二時間たち・・・そうしてあたしは気づいた。それは、遅すぎたぐらいだった。通りゆく男達に絡みつく女の人たちは、綺麗な衣に綺麗な髪飾りを纏い、一分の隙も無く化粧を施した顔に赤い口紅をひいていて、誰もが皆「女」であることを、自分がどんなにいい「商品」であるかを競い合うように全身を磨き上げていた。そんなところに、髪はざんばら、埃で薄汚れた頬にくったくたになったズボンを履いたドブネズミのようなあたしがいたって、誰も声をか
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