プロローグ:4人兄弟姉妹、☆空レストランへ行く
もう(声優に夢見る意味)ないじゃん……
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》イベントに参加する売り子さんやらCGのレベルやら素性やらを知っている。もちろん、裏の容貌や本音も。
一方で、みんな仲良しの素振りをしながらその裏で互いに格付けしあう女子(ちな年齢不問。何度も言うけど年齢不問)の恐ろしさを理解しきれていないお兄ちゃんは、まだレイヤーさんやらCGに幻想を抱いていて、恐ろしくて面倒臭い一面を把握できていないようだけど、それはそれで知ったら壊滅的なまでに現実の女性に幻滅する一因になりかねない気がする。
まあ、顔含む外見がいい兄のこと、いざ自分から動き出せば三次元のカノジョには事欠かなかった。そのくせに元カノに恨まれたり刺されたりストーカーされたりという噂すら残さず、綺麗に別れて新しいカノジョを作るテクニックは本当に凄いと思う。あたしの弟たちには見習ってほしくないけど。
「なんでお前はそう兄のことを信用してないかなー」
「心配の裏返しだと思ってくれたら妹としては嬉しいんだけどなぁ」
妹としてこの兄の何が心配かっていえば、それはもう言わずもがな。
「大丈夫だって。俺が本当に愛しているのは――」
「そこで女性声優出したら殴るよ?」
「…………」
妹の一言に、兄、唐突に無言。
――そう。あのいろいろ手遅れなオタクの妹・結月を育てたといっても過言ではないのが、今あたしの右隣でハンドルを握る自他ともに認める声優オタの兄・暁斗だからだ。
「はぁ……。どんだけ声優に夢見てんだか」
「何だよー。いいだろ、夢見るくらいは」
夢を見るのはあたしだって否定しない。
否定はしないけど、夢を現実まで引きずるのは問題だ。
しかも夢を引きずった人間のなれの果てがこれとは、神様もなかなか気紛れで酷いことをなさる。悪い意味で。ほんと悪い意味だけで。
「まあ、レコーディングスタジオのエンジニアにまでなっちゃう努力は認めるけどね」
「当たり前だよー。想像以上に実力主義の世界なんだぞー」
これだけ真面目な会話でも間延びする兄の言い方のせいで緊張感や迫力は全くないが、そちらの世界は年功序列や血統などがまったく通用しない。一に実力、二に実力――ぶっちゃけると、コネと事務所のプッシュもあれば最強だってことはあたしも理解している……つもり。
そもそもあたしもそういう方面にツテやらコネやらを持ってるし。
「ま、収録現場も結構苛酷だもんね」
「そうだよー……って、現場見たことあんの?」
「あるよ。てか、あたしの立場をなんだと思ってんの?」
「……マジで?」
「マジで」
驚くばかりの兄に、あたしは短く返す。
仕事場である収録現場は部外者が入り込めない聖域であるかのように
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