第二百九話 もう一人の龍その一
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第二百九話 もう一人の龍
信長は自ら十万の兵を率いて主な家臣達と共に佐竹の領地である常陸に入った。そこはもう織田家の領地で。
それでだ、その国に入ると。
信長は多くの民達に囲まれて歓迎を受けた、彼はその民達を見て笑って言った。
「わしは何もしておらぬがな」
「それで民達にこうまで慕われることがですか」
「思いも寄らぬことじゃ」
こう明智に言うのだった。
「これはな」
「いえ、これはです」
「訳あってのことか」
「はい」
そうだというのだ。
「殿がこれから為さることを存じているのです、この者達は」
「だからか」
「はい、そうです」
明智は信長にはっきりとした声で答えた。
「ですから」
「わしがこれからする政をか」
「この者達は知っているのです」
「だからわしをか」
「笑顔で迎えているのです」
信長がもたらすそのことについてもだ、明智は語った。
「泰平と繁栄を」
「その二つをか」
「左様です」
「それでか」
「そうなのです」
「ではな」
それならばと答える信長だった。
「わしもじゃ」
「その声に応え」
「戦の後の政に励むとしよう」
「関東もですな」
「見事な国にする」
「そうされますか」
「うむ、この戦の後でな」
こう明智に言うのだった、そしてだった。
信長は進軍中にだ、煉獄からこう聞いた。
「伊達の兵は二万か」
「ああ、それ位だったぜ」
煉獄は馬上の信長の左に来て歩きつつ述べた。
「数はな」
「左様か。そしてじゃな」
「連中もいたぜ」
「伊達の騎馬鉄砲隊がじゃな」
「連中が問題だよな」
煉獄は信長に確かな笑みで問うた。
「殿のそれはな」
「うむ、わかっておる」
信長にしてもだった、そのことは。
「充分な」
「それじゃあな」
「騎馬鉄砲隊が来るのはわかっておった」
その彼等がというのだ。
「それでじゃ」
「備えは考えているんだな」
「うむ、既にな」
煉獄にこう答えるのだった。
「用意しておる」
「殿、伊達の騎馬鉄砲隊は」
奥羽と接している越後にいる兼続が信長に言って来た。
「身分の低い者達の次男、三男達を集めた」
「命知らずの者達ばかりじゃな」
「戦で最ものし上がれる者達ばかりをです」
「兵にしておるな」
「はい、馬に乗りつつ鉄砲を撃つ」
だから騎馬鉄砲隊なのだ、馬と鉄砲という二つの武器を共に使う政宗が考え出した独自の兵達である。
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