第四十八話 薊の師その十
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「その人の案内を受けてね」
「それで、ですか」
「見学してね」
裕香に何でもないといった顔で言うのだった。
「これから」
「わかりました、それじゃあ」
「少し待ってね」
その案内役の人が来るまでというのだ、そして暫くして。
白い半袖の制服を来て白いエナメル靴を履いた若い男の人が来た、肩には黒地に金のラインが一本入った肩章がある。制帽の唾には金の顎止めがある。背が高く眼鏡をしている。
その人が肘を折った敬礼をしてだ、薊達に言った。
「案内役の佐古二尉です」
「佐古さんですか」
「はい」
裕香に対して折り目正しい声で答えた。
「今日は宜しくお願いします」
「わかりました、それでは」
裕香も佐古二尉に礼儀正しく返す。
「今日はお願いします」
「それでは」
「それで何処を案内して頂けますか?」
向日葵が佐古二尉に案内場所について尋ねた。
「今日は」
「はい、基地の中と」
「護衛艦は」
「中は今日は無理ですが」
それでもというのだ。
「潜水艦も停泊していますし近くまで行けます」
「そうですか」
「そしてお昼もです」
この時もというのだ。
「用意してあります、今日は金曜ですから」
「金曜日だからですか」
「はい、カレーです」
「自衛隊は金曜はカレーでしたね」
菖蒲は佐古二尉の言葉を受けてこのことを自分でも言った。
「そうでしたね」
「それで一週間の日時を頭に入れるのです」
「食べものから」
「そうしています」
「それで金曜はカレーなのですね」
「我々だけでなく陸自さん、空自さんもです」
つまり全ての自衛隊がというのだ。
「全ての部隊、全自衛官が金曜日はカレーです」
「まさに全員が、ですね」
「カレーを食べます」
佐古二尉は薊達に微笑んでこのことを話すのだった。
「そうなのです」
「カレーですか、わかりました」
菊も薊のその言葉に頷いて言った。
「じゃあお言葉に甘えまして」
「ではお昼はそれで」
「はい、今からですね」
「案内させて頂きます」
こうしてだった、一行は佐古二尉の案内の下横須賀の基地の中を見て回った。細長い形の波止場に多くの護衛艦が停泊している中に。
一隻黒く小さな葉巻型の船があった、それは。
「これが、ですね」
「はい、潜水艦です」
佐古二尉は桜に答えた。
「普段は潜水艦の港はアメリカ軍のベースの中にあるのでそちらに停泊していますが」
「今はですか」
「ここに停泊しています、教育隊の隊員の見学の為に」
「そうなのですね」
「はい、近くに行かれますか」
佐古二尉は年下である薊達にも丁寧でかつ紳士的に言う。
「中には入られませんが」
「そうさせてもらいます」
桜は佐古二尉の言葉に微笑んで応えて
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