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パンデミック
第六十七話「違和感の正体」
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に曲がる。

「安らかに眠れ……」

息絶えた兵士の亡骸に静かに呟く。




「……貴様…俺の部下を冒涜してなにが面白い?」

「…………仕方のないことだ。これが自分の能力だからなぁ」




アクエリアスの適合能力は、他の適合者と比べても面倒なものだった。


”即効性接触感染”


適合者の中ではかなり厄介な部類の適合能力だ。
高濃度のコープスウイルスを身体に纏い、接触した人間をほぼ100%感染させる。
纏ったウイルスの感染有効範囲は、せいぜい皮膚から1.5oまでだが、適合者の身体能力を
合わせれば、それ程大した弱点にはならない。
高濃度である故か、アクエリアスが放つウイルスに感染した人間は、30秒もしないうちに
感染者に変貌する。












「(接触した時点で即時感染……打撃は控えた方がいいな……)」

アクエリアスの挙動をじっと見ながら、タガートは静かに分析する。
触れた時点で感染するのであれば、直接触れる打撃は使えない。

「全員聞け。ここからは短期決戦だ。これ以上戦闘が長引けばいずれ奴に捕まる。そうなれば、
感染して味方に余計な被害が出る。いいな?」

「「了解」」


タガート隊が一斉にアクエリアスに攻撃を仕掛ける。




「面倒だなぁ……後は任せた」


アクエリアスの小さな呟きは、タガート達の耳には届かなかった。
しかし、何かをしようとしているのは伝わった。

「(奴の能力は一度見ている。距離を保ちながら立ち回れば……)」

ナイフを構え駆けながら思考を巡らせる。



タガートと彼の部下たちの刃が到達する直前……


「「!?」」


その場にいた全員が驚愕した。








消えた。

目の前から、敵が忽然と姿を消した。





「なんだ? 何が起きた? 奴はどこに行った?」

タガート達が慌ただしく視線をあちこちに巡らせると……




「……ここだ」


背後から声。

振り返ってすぐに居場所が分かった。
タガートと兵士たちのすぐ後ろにいた。
いれば確実に気配で気づくであろう位置に、何食わぬ顔で立っていた。

「………はぁ…また戦局が動いていたか……まあいいか」

「…? 何を言って……」

「……さっきも言ったが、自分は戦闘は他人任せだ。とは言え、自分が立ち回ると、大抵
戦闘が終わっていたりするんだが……今回はそうはいかなかったようだ」

意味が分からない言葉をタガートに言い終えると、大きくため息を吐いた。


初めて遭遇したときと同じ、面倒くさそうな表情を浮かべて。


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